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★エッセイ『ことなひまめのオッペケペーですっとこどっこいな日常』
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『いつかはこうなると思っていた』100

 夕べおなかを出して寝ていたら風邪をひいた。
 仏間の網戸を開けたままだったので、朝方の冷気にやられたようだ。
 今日は秋の運動会日和の日曜なのだが、その誘いを断ってまでボクらは今日も仕事です。
 日中はまだまだ暑くなりそうだ。でも、朝夕の冷え込みは、まぎれもなく「秋」そのものだ。そして、この真空の、抜けるような乾いた空もまた、明らかに季節の交代を教えている。
 そんな朝の空を見上げながら、妻とこんな会話をした。
「そろそろ薪の準備を始めなきゃな」
「今年は新米おいしそうだわ」
 前者が誰で、後者が誰かはお分かりいただけよう。
 (2010.09.05)   このページのトップへ

『スタンドバー形式』99

 腰痛が持病のボクは、最近それに悩まされ始めました。
「ずーっと座ったままだからよ」
 妻に言われました。
「立ってるだけでも違うわよ」
「えっ! 立って書くの?」
 一瞬、立ってキーボードを叩いている姿が浮かびました。
「少なくとも晩酌タイムは立ってなさい」
 妻はそう言ってカウンターの椅子を撤去してしまいました。
 案外いい感じでしたよ。映画で見るスタンドバーみたいで。
「やあ、ビールもらえる?」
 立ったままボクが言います。
「自分でどうぞ」
 その辺はちょっと違います。
 (2010.09.03)   このページのトップへ

『おねえちゃん イン ハワイ 』98

 妻の一番上の姉が、娘とハワイに行ってます。
 妻はその姉にメールを打ちました。
 ケータイからすぐに返事がありました。
 便利になったものですなあ、しかし。
 ブロードバンドではなく、昔ダイヤルアップで接続していた時代、ヨーロッパやアメリカに出張して仕事をする時は、国別にたくさんの通信アダプターを用意しなければなりませんでした。
 今は、こっちで使っているケータイがそのまま使えるんですものね。隔世の感がいたします。
 おねえちゃんのメールには、
「U子に、『おかあさんの水着姿見たら切なくなった』って言われたの」と書いてありました。う〜ん、こちらも隔世の感があったのでしょうか・・・。
 (2010.09.03)   このページのトップへ

『夏の夜のにおい』97

 何だろう。
 遠い昔、夏の夜にかいだことのあるにおいだ。
 それは暗がりの草むらから夜風に乗って運ばれてくる。
 茅の堆肥の中から、カブトムシの幼虫を掘り出した時にかいだような、
 酢が動物的に腐ったような、
 虫の命の最後のにおい。
 (2010.09.03)   このページのトップへ

『のっぴきならない』96

 何でもかんでも書けばいいってもんじゃねえよ! そういうお叱りの言葉が聞こえてきそうです。
 しかし、これだけはどうしてもお伝えしておかねばなりません。のっぴきならない事態なのです。
 さっき、アシナガバチが入ってきて、例によって格闘して何とか追い出したと思ったら、今度はそれを聞きつけた仲間のアシナガバチが、軍隊のように大挙して攻撃してきたのです!
 はっきり言って怖かったです。妻も茫然自失、ショックで立ち直れない状態になりました。だってブンブンブンブン何匹も入ってくるんですよ。しかも、攻撃してくるんですよ!
 結果、敗軍の兵は窓を閉め切るしかありませんでした。あっ、ボクらの仕事部屋の窓には網戸がありません。ちなみにあるのは台所と仏間だけ。
 そういうわけでのっぴきならないほど・・・暑いんです。助けてください。保冷剤などすぐにとけてしまうのです。本当に困っています。
 (2010.09.02)   このページのトップへ

『最も暑い夏』95

 ミセスホウレンの言ったことが裏付けられた。
 気象庁が昨日発表したデータによると、明治31年に統計を取り始めて以来、113年間で最も暑い夏だったことが分かったのだ。これは6月から8月の全国の平均気温だから、9月になってもいっこうに衰えないこの気温(ちなみに今34℃)をみると、このままでは最も暑い秋の記録まで出してしまいそうだ。
 そのことを妻に言うと、妻は相変わらず保冷剤を背負ったまま、
 「年寄りの体感温度ってス・ゴ・イ!」 と言った。確かにすごい。それにしてもミセスホウレン、大丈夫だろうか。保冷剤を教えてあげなくていいだろうか。
 (2010.09.02)   このページのトップへ

『映画好きなトンボ』94

 ここ数日、「映画コーナー」の充実を図るべくあれこれやっているのですが、二人とも大好きなジャンルなので盛り上がっています。
 晩酌タイムも映画の話題で持ち切りです。 
 ボクらがここに来て一緒に鑑賞した映画は200本は下らないと思うのだけれども、その中で厳選した100本ほどをこのホームページに紹介したいと思っています。
 ボクらがこれから見たい映画もたくさんあります。そして星の数ほど映画が作られています。昔も、今も、これからも。
 本当に奥が深いなあ。一生かけて何本見られるかなあ。たくさん見たいなあ、いい映画。
 ボクらは近くにレンタルビデオ屋さんがないこともあり、それ以前にお金がないこともあり、ほとんどBSでやった映画を録画して見ています。中には廉価版のDVDを買って見たものもありますが、ほとんどがBSです。NHKさんありがとう。
 映画館なんてもう何年も行ったことがありません。
 しかも、今時は3Dテレビとか50型くらいの超大型液晶画面が当たり前なのに(この田舎でもそういう大型テレビが普通のようです)、ボクらはパソコンの(TVチューナー付きディスプレイの)17インチ画面で見ているのです。はっきり言って小さいです。
 でもね。それがまたいいんですよ。大きい画面だと、どうしてもソファーに横になったり、畳に寝転んだりってなるでしょ。
 小さい画面は昔、白黒テレビの前で身を乗り出してアニメを見ていた時のように、真剣に釘付けになって見ることになります。お互いの距離もきわめて近いです。興奮が、鼻息が伝わる距離。
 時代遅れと言われようが、負け惜しみと言われようが、貧乏人と言われようが何と言われようが、ボクらはこの映画鑑賞スタイルが気に入っています。ただ一つ、このテレビの問題は緊急災害情報が流れた時です。画面の上に横にズズズズ〜っっとテロップが流れ、画面の左に「台風情報」と大書されてしまうと、ただでさえ小さい画面がほとんどなくなってしまうからです。この間の大雨の時は「文庫本サイズ」でした。ちょっと見にくかったです。
 夕べ映画の話に花が咲いていた時、ふと網戸を見ると、トンボが一匹ジッとボクらの会話を聞いていました。網戸に張り付いて。
 好きなのか、お前も。そう思いました。
 (2010.09.02)   このページのトップへ

『移動してます』93

 背負うだけでは足りず、妻は移動する技を発明!
 これで体の隅々まで冷やせます。 
 動脈が走っている部位がいいようです。
 脇の下、ひざの裏、足の裏などが狙い目のようです。
 ボクも寝ながら耳の辺りにつけてみたら気持ちよかった。
 一カ所に長くやっていると凍るので、ちょくちょく移動を繰り返しながら「ああ、気持ちいい、気持ちいい」とやっております。
 そんなわけで、酷暑を乗り切る方法を何回となく書いておりますが、よく考えたらこういう方法が参考になる人は少ないのではないだろうか、と思えてきました。
 そもそもエアコンない人っているの?
 そもそも首に保冷剤を巻いて仕事ができる人っているの?
 そういう「そもそも論」に立ち返ったわけです。
「いないね。お年寄りとアッッシュくらいか、せいぜい」なぜか目を輝かせて妻はそう言いました。
 (2010.09.02)   このページのトップへ

『カレンダーをめくってみた』92

 錦の山並み。栗駒山の写真があった。
 そうか、今日から9月なんだなあ・・・。ボクは窓を開けてみた。 
 カレンダーの写真とは全く違う景色がそこにあった。腹が立つくらい暑い外気と、やたら元気のいい太陽がそこに。ニュースでは今日は33℃、明日は34℃だそうだ。
 ミセスホウレンの言葉を借りれば、「84年間生きてきた中で一番暑い夏」ということになるらしい。その通りかもしれないと思った。
 確かにこれほど「熱中症」という言葉を聞いた年はなかった。これほど「ガリガリ君」が売れた年もなかったようだ。妻が昨日WEBで「暑さでまいっているペットちゃん」の写真を見て笑っていたが、水洗トイレの上さえも彼らに取っては涼しい場所らしい。
 暦の上では「秋」なのに、どこまでもいつまでも「夏」がねちっこくへばりついている。いや、より勢力を増して「秋」を浸食している。
 夜も暑いせいか、昨日モヤモヤした夢を見た。
 ボクたちはパプア・ニューギニアにいた。「今年は涼しいあるよ」と酋長が言っていた。どうして中国人なまりなのか分からなかった。「涼しいあるある」とボクが言っていた。
 起きてから思った。そうか、そう考えればいいんだよな。ここは日本ではなく、もともとパプア・ニューギニアなんだと。ボクらはそこの原住民なんだと。
 その話を妻にすると、妻は涼しい顔で、
「その割に色、白くない?」と言った。
 (2010.09.01)   このページのトップへ

『禍福はあざなえる縄の如し』91

 この世の幸不幸は繰り返す、ということわざですね。
 禍いが幸いを呼ぶこともあれば、幸いが禍いを呼ぶこともある。 
 似たような意味のことわざに『人間万事塞翁が馬』というのもあります。
 93歳で亡くなったハナさんという近所のおばあさんも、ボクがこっちに来たころ、「生ぎでればいろったごどある」と言って励ましてくれました。これもボクの座右の銘になっています。
 その時起こったことを禍いと見るか、幸いと見るか。事故や病気など、どう考えても禍いとしか思えないことも、後になって「ああ、あのことがあったお陰で今はこんなに幸せになったんだ。辛かったけど、あれには意味があったんだ」と思えるような人生を送りたいものです。
 いつになくまじめなことを書いているなあ。らしくないなあ。
 日曜の今日も、ボクらは朝から仕事をし、お昼に「ひやむぎ」を食べ、さっきタバコを買いに行こうとしたら自転車がパンクしていたので妻と歩いて買いに行ったら、強烈な暑さで目がくらみ、帰ってから麦茶を一杯飲み、さあ、仕事再開! と思ったらまたアシナガバチが入ってきて、それと格闘していたら汗だくになり、妻の発明の保冷剤を首に巻き・・・。
 今入ってきた巨大なオニヤンマを見ながら、こういう暮らしがいつまでも続いたらいいなあ、とボクは思っているのです。
 (2010.08.29)   このページのトップへ

『臭い! 危ない!』90

「うわっ! 臭い! 強烈!」ヘッドホンをしてトトトトトトトしている妻が叫んだ。鼻はふさがっていない証拠だ。
「おおおお〜臭い! マジ臭い! 何だこりゃ、誰だこりゃ?」 
 息が詰まるほど臭い。それは全開の窓から西向きの風に乗って入ってきた。
「土曜日も汲んでるのね」顔をしかめながら妻が言う。
「どうもそのようだね。それにしても人様のは特別臭いね」
 そのさなか、今度は巨大なアシナガバチが部屋に入ってきた。妻は気付かない。目と耳がふさがっているからだ。アシナガバチは妻の頭の上にいる。
「危ない!」ボクが叫んで妻をかばう。妻はまた「首輪を付けた犬」になって机の下に退避する。
 殺虫スプレーをもって格闘5分。何とかハチを追い出すことができた。
 田舎では仕事がはかどりません。
 (2010.08.28)   このページのトップへ

『繭玉のように紡がれた言葉』89

 すばらしい表現だ。
 晩酌タイムに妻の口から飛び出した名言。 
 美しい! あまりにも美しく文学的だ!
 どういう脈略でそういう美しい言葉が飛び出したか忘れてしまったが、とにかくこの珠玉のフレーズをここに書き留めておきたくなった。
 このフレーズが誰かに盗まれないように「先願権」を主張する意味もある。そんな大仰な!
 お察しの通り、ボクらの会話は普段、非常にばかばかしいことばかりなので、こういう名言は貴重だ。大切にしたい。
 さて、このエッセイだが、果たして「繭玉のように紡がれた言葉」になっているだろうか?
 ・・・・・・。そろそろ仕事します。
 (2010.08.28)   このページのトップへ

『ゴーヤ』88

 ボクは新御三家が全盛だった当時、西城秀樹はあまり眼中になかった。どちらかというと野口五郎派だった。本名が佐藤靖でボクと一字違いだったからという単純な理由だ。
 ちなみに妻は西城秀樹の大ファンだったそうだ。猿顔が好きという理由らしい。 
 さて、どうして西城秀樹かというと、たまたま見てしまったBSで「昭和のしょしょしょ」(正式な番組名は忘れたがそういう音楽が流れていた)で、西城秀樹がクローズアップされていたからです。
 今見るとあの頃の秀樹はかなりかっこいい。身長182センチもあったんだあ、へええ。日本で初めてステージでスモークを使ったんだあ、へええ。初出場の紅白歌合戦に怪傑ゾロのマスクを付けて出たんだあ、へええ。
 それにインタビューに答えている姿勢も立派というか、人間ができていると思った。病気もしたし、苦労が身に付いているなあ。いい年を重ねているなあ。
「秀樹、感激!」
 そんなわけで、りんごとハチミツがトロ〜リとけてる「ハウスバーモントカレー」(辛口)が食べたくなった。
 あれ? ちょっとすいません。これじゃタイトルの「ゴーヤ」が浮いてしまうぞ。
 ボクはゴーヤを書きたかったはずだ。どうしてこうなったのか? 誰か教えてください。
 う〜ん。あ、そっかそっか、ゴーヤと西城秀樹は似ていると思ったからだった。顔? いえいえ、顔じゃありません。顔のボコボコはどちらかというと坂本九ちゃんでしょう。
 つまり、昔はあんまり好きじゃなかった西城秀樹を最近大好きになったように、ボクらは今「ゴーヤ」に夢中になっているということを言いたかったのだった。
 ちょっと強引にまとめてしまった。
 (2010.08.28)   このページのトップへ

『けもの道』87

 その道を通ってその人はやってくる。
 その人は「人」であって決して「けもの」ではない。どころか、とってもいい人である。スズちゃんだ。 
 以前、カツオのお礼に「お野菜セット」を持ってきてくれた裏どなりの奥さん。だんなさんはアッキーさん。
 裏どなりなので正式の道がない。正式の道を通ってくると結構時間がかかる。それに人に見られる。そういうこともあってか、彼女は独自の道を切り開いたのだ。けもの道である。
 その道は、裏の畑の垣根から一気に我が家のキッチン&リビングに突き当たる直線コースだ。
「あっ! 誰か来た!」晩酌タイムにスカートをたくし上げて(暑いですものね)くつろいでいた妻が驚いて叫んだ。1週間ほど前のことだ。
 慌ててそっちの方向を見ると、ワサワサと雑草をかき分けてイノシシのように突進してくる者がいるではないか! 妻は驚いてスカートを下ろした。というか、普通の状態に戻した。
「だ、だ、だ、だれ!?」
 彼女の手には、カボチャやスイカ、トマト、ナスなどの入った袋が握られていた。ボクらは引きつりながら、お返しに「有名なラスク」を少しあげた。
「今度まだ枝豆もってくる」そう言って彼女は帰っていったが、ボクたちにとってその方向は死角だったので、これは油断できないゾ、という緊張が走った。
「また来た!」それは3日前だった。本当に枝豆を持ってきてくれた。ボクらはそのお礼に、昨日、親戚から大量に送られたので食いきれないと思っていた大潟村のメロンをあげることにした。けもの道は怖いので正式の道を通って行ったのだが、あいにく留守だったのでメモを書いて玄関先に置いて帰ってきた。
 そして昨日。メロンのお礼を持ってまたスズちゃんはやってきた。あの道を通って。
「アキオさん(ご主人、アッキーのこと)も『これはたいした高いメロンだ』って言ってだ。ありがどう!」 
 そう言って、今度はキュウリの漬け物やナスを置いていった。
 けもの道は、今や交易の要衝、シルクロードの役割を果たしている。
 (2010.08.27)   このページのトップへ

『ショミキ』86

 それは賞味期限のことである。ボクらには長い読みの言葉を簡略化するクセがあって、例えば「ヤシハン」というのは「ヤシ風ハンバーグ」のことであり、「メドハ」というのは「メドはさまり」のこと。(股間にズボンがくいこんでいる状態ですが、分かりますか?)
 まあ、それはいいとして「ショミキ」についてずーっと疑問だったことがあります。 
 1品だけ賞味期限が表示されていない食べ物がある、ということです。しかも、それは明らかに生鮮食料品です。さあ、何だと思いますか?
 スーパーなどで買い物をしていて、割と手に取りやすい小袋です。
 さあ、何でしょう? ヒント1、値段は百円以内です。
「あっ! もやしだ、もやし」という声が聞こえてきましたが、ブッ、ブ〜! あれはちゃんと表示されています。だいたい2〜3日がその期間です。
 正解言っちゃいます。「なめこ」です。「なめこ」には賞味期限が書いてありません。
「なめこって結構もつからじゃない?」 妻もそう言うし、ボクもそう思っていました。
 しかし、昨日「なめこのみそ汁」を作ろうと思って袋を開けると、まだ1週間くらいしかたっていないのに何だか怪しい感じがしました。
「なんかヌルヌルしてる」妻が言いました。
「ヌルヌルはなめこの本質だよ」冷静にボクが言いました。
「でも、ちょっと変」妻は、なめこを一個つまむと勇気をもって口に入れました。
「あっ、酸っぱい!」 
 ほらね。これだけ品質表示やらアレルギー表示やらとうるさい時代に、かたくなに「ショミキ」を秘匿している頑固さは認めるよ。でも、やっぱりお前も腐るのだよ。
 そろそろ自分の弱さを認めたらどうだい?
 なあ、なめこよ。
 (2010.08.27)   このページのトップへ

『死語復活プロジェクト〜一人称編』85

 言語学者でもないので、あまり詳しくは分からないのだが、日本語はこの「一人称(二人称もだが)」において他の言語を圧倒してるのではないだろうか。
 「私」は、英語で「I」、フランス語で「Ju」、ドイツ語で「ich」、イタリア語で「io」に当たる(たしか)。しかし、逆に訳そうとした場合、「私」は無限に変わる。 
 「わたし」「わたくし」「ぼく」「自分」「おれ」「あたし」「うち」「真理ちゃん」「ヤッシ君」・・・。
 そういうわけで、しつこいと思われるかもしれないが、今日は一人称の死語について考えてみたい。これで最後にしますので、我慢して付き合ってください。
 まず「おいら」である。これを昔よく使っていたのは長渕剛であった。「おいらの家まで」という歌もあった。しかし、これは今使うにはちょっと抵抗がある、というか知能レベルが疑われるのではないかと不安になる。「おいら、かっこいい?」ちょっと言えないなあ・・・。「ばーか!」と言われそう。やっぱり死語だろう。使わない方が無難だ。
 長渕もそうだが、世良公則やチャゲ&飛鳥も多用していた「あたい」はどうか。あれは西日本方面の方言なのだろうか。「あたい」ときた場合、必ず呼応して「あんた」になる。「あんた」と「あたい」はセットである。でも、これもどうか。ボクは抵抗がある。「あたいがさあ・・・」と目の前の妻に言われたら、引くような気がする。
 こんなのもあるなあ。「あちき」。このルーツは花魁芸者筋のようでありんす。ちょっとグラッとくる。「あちきを連れて逃げて!」言われてみたい。時代劇で使われる一人称といえば「拙者」「あっし」というのもある。任侠関係では「手前」というのもあった。「手前、生国と・・・」。死語というよりも骨董品的一人称である。
 さて、本題とは全く別の結論を出したくなった。
 最も威張っている一人称は何か? 「おれさま」もしくは「わがはい」である。
 最も短い一人称は何か? 「わ」である。津軽弁ばんざい! 
 最もしまらない甘えた一人称は何か? 「ぼくちゃん」、「ぼくちん」。
 上流階級の一人称は何か? 「余(よ)」、「麻呂(まろ)」である。
 そして最も恐れ多い極めつけの一人称は何であるか?
 朕(ちん)! 決まった。文句なし。
 (2010.08.26)   このページのトップへ

『死語復活プロジェクト〜さようなら編』84

 高邁な思想でスタートして間もないこのプロジェクトだが、さっそく浮かんだテーマがある。「さようなら」の死語だ。
 まず「バイナラ」はどうだろう。これはバイバイとさようならをドッキングさせたかなりレベルの高いものである。しかも、これにはなんかジェスチャーが付いていたはずだ。でも、今時「バイナラ!」と言っている人は少ないのではないか。流行らせたい! 
 次に「バイチャ」はどうか。Dr.スランプアラレちゃん。懐かしいなあ。これはかなりかわいい。したがって普及は早いように思われるのだが。
 これ知ってるかなあ。「バッハハ〜イ!」。確かケロヨンという着ぐるみがやっていたはずだ。これもかわいいからいけそうだ。
 これはちょっと・・・と思われるものに「バイビー!」というのがある。軽薄である。絶対「おやじ!」と言われる。やめたほうがいいかもしれない。ちなみに秋田弁では「へばまんつ」という。「へば」だけで使う場合もある。これは地域限定方言として確立している。
 別れのあいさつ「さようなら」を使うときは、結構状況判断が必要となる。恋人同士の深刻な別れの場面ではなおさらだ。
「私たち、もうお別れなのね・・・」女が言う。夕闇の海岸、遠くで汽笛の音。ボ〜ッ。
「ああ、そろそろ行かなきゃいけない」男、腕時計に目をやり、コートの襟を立てる。女、涙を浮かべてうつむきながらつぶやく。
「ほな、さいなら」
「・・・」 
 絵にならない。
 (2010.08.24)   このページのトップへ

『死語復活プロジェクト』83

 昨日買い物に行ったクルマの中で妻が言った。「あたりきよー」。
 そしてその一言が道中大きな物議になった。「あたりきよー」が死語かどうかである。たぶん死語だと思う、という結論に達した。若い人には分からないだろう、というのがその理由である。 
 じゃあ、同じような意味で「あたぼうよー」はどうか? という問題が持ち上がった。これはもっと死語だろう、前者は死後20年ぐらいに対し、後者は死後30年ぐらいたっているのではないか、という予測をたてた。
 じゃあ、やはり同じような意味で「あったりまえだのクラッカー」はどうか? という新たな問題が持ち上がった。これは50代以上の人で、当時テレビが家にあった人にしか認知されてないだろうということになった。したがって死語ということになった。
 高校の時「当然のブルースよ」という造語を友人が発明して一時流行ったことがあるが、それはこの際置いといて、「もっちのろんよ」はどうか? これは絶対死語だろう。 「あだりめだっちゃ〜」はどうか? これは石巻、もしくは仙台弁なのでセーフだろう。
 そんなことを激しく議論しているうちにボクらは家に着いてしまった。
「日本語ってすごいね」と妻。
「英語ではIt is natural that〜だもんね、みんな」英語に堪能な(?)ボクが言った。
「死語と呼ぶのはかわいそう」
 そうだ、こういう言葉こそ大切にしなければならない。もう一度日の目を見させてあげなければならない! 
「よしっ! ボクらで死語を復活させないか!」まなじりを決してボクが言った。
「あたりきよー!」こぶしを振り上げて妻が叫んだ。
 (2010.08.24)   このページのトップへ

『いただきものラッシュ!』82

 スイカ、枝豆、メロン、イワシ、米ナス、トマト、有名なラスク、本物のビール、高いワイン(白と赤)、フツウのピーマン、純米大吟醸4合瓶、梨、小さめのサザエ、生ハム、マツモという高級海藻・・・。
 脈略も順番もカテゴリーも不問で書き並べてみましたが、これみんな、ここ最近のいただきものです。
 石巻からのお土産や友人からのプレゼント、近所の人たちなどから大量多品種のものをいただきました! 謹んで御礼申し上げます。
 ナスとキュウリはさすがに旬が終わったとみえてリストから外れています。
 お酒関係はもちろん、果物関係が多いのがうれしいですね。高級品で普段めったに食べることができないですから。   
 今日は暑いので、さっき「スイカ」を食べました。「メロン」はおととい食べきってしまいました。果物は「梨」だけが残っている状態です。
 今日のつまみは「枝豆」&「米ナス」「トマト」「ピーマン」を使った「チーズ焼き」です。
 「サザエ」「イワシ」は昨日食べたし、お酒関係も東栄夫婦からいただいた「高いワイン」以外はほぼ飲みきりました。「ビール」が何缶かあったかな? 「マツモ」はおつゆに入れて何度か味わっています。
 「有名なラスク」は人にあげたり、朝食で食べたりしてもうあんまりありません。
 そんなわけです。ちょっぴり寂しいです。またください。
 (2010.08.23)   このページのトップへ

『いろんなところで背負ってる模様です』81

 妻のあの実用新案が流行っているようです。
 関西方面では熱中症対策として甲子園球児たちがベンチで背負ってました。テレビに映っていたのです。すごい!
 石巻方面では、おばあちゃんがきれいなスカーフのようなものに保冷剤を巻いて「あんべいい、あんべいい、もっと早く教えてほしかった」と言ってました。
 おばあちゃんは、近所のおばあちゃんたちにもクローラーを回した模様で、隣のスアシさんやまたお隣のおばあちゃんもやっている、みんな大満足との情報を得ております。今後はデイサービス先でも流行らせるそうです。すごい!
 もっとも驚いたのは、犬のアッシュまでこの「究極の涼」を取り入れている、ということでした。   
 いつもは首に巻かれるようなことをされると、噛み付かんばかりに怒るのに、なぜかこれだけは従順におとなしくして巻かせるのだそうです。分かるんですね、この気持ちよさ。ペットだって熱中症にかかるのだから、これはペット方面にも効果がありそうです。
 今年は残暑も厳しそうです。どうぞ、皆さんお試しください。
 妻は自分の発案が流行の兆しということに気を良くしたようで、
「貧乏は発明の母ね」などとゴロッとした涼しい顔でのたもうております。首にはもちろん巻いてます。
 (2010.08.23)   このページのトップへ

『自由と平等』80

 最近、憤慨したことがある。
 それはケンタッキーフライドチキンのドライブスルー(ああ、長い。KFCのDTで分かるかなあ・・・)でのことです。
 ご承知のように、ボクらの住んでいる所にKFCはなく、秋田市まで行かなければならないことは以前書きました。
 もう一つご承知のようにKFCの部位で一番好きなのは「あばら肉」であることも書きましたね。
 お盆に帰った石巻でのことです。めったに食えないKFCを食べるチャンスが訪れました。   
 その日は、妻の真ん中の姉の配慮もあり夕食は『KFC』と、これもめったに食えない『ストロベリーコーンズの宅配ピザ』と決まりました。
「わあい! わあい!」ボクたちは子供のようにはしゃいで、おばあちゃんと一緒に墓参りのあとKFCのDTに行ったわけです。
「おねえちゃん夫婦1カップルでしょ。それからめいのMちゃんと彼氏で1カップルでしょ。それから私たちが1カップルでしょ。それからおばあちゃんとアッシュで1カップルでしょ。だから合計4カップルだから全部で8ピースあればいいんじゃない?」妻が言いました。アッシュというのは実家の愛犬です。なぜおばあちゃんとアッシュがカップリングされたのかは疑問でしたが、とにかくそういう方針でボクらはカーネルサンダースさんのお宅へおじゃましたわけです。
「ええ、すいません」マイクに向かって顔を突き出しながらボクが言いました。かなり大きい声で。
「・・・」しばらく何も応答なし。カーネルサンダースさんお留守かしら?
「ええと・・・フライドチッキンを8、8、8・・・」なぜかあがっていました。声がうわずっていました。
「・・・」
「8ピー、8ピー・・・」
「いらっしゃいまっせー、ご注文お決まりでしょうかあー!」
 いきなりボクは振り出しに戻されてしまいました。
「えっと、えっと8です。8ください、お願いします」
「フライドチキン8つですねえ」その後、辛いのがどうとかこうとか言っていましたが、あがったボクはその後のことをよく覚えていません。
「では、ゆっくりと前にお進みくださいまっせえ!」
 ボクはゆっくりと前に進むしかありませんでした。「あばら肉」の一言が言えないまま。
 うなだれているボクの脇で、妻はこんな言葉で慰めてくれました。
「ほらっ、あそこの貼り紙見て。『お客様平等の観点から部位の指定には応じかねております』って書いてあるわよ。どうせ無理だったんだからあきらめなさい」
 確かに書いてあった。確かにそれは平等の観点かもしれない。しかし、しかし、しか〜し! ボクのささやかな自由の観点はどうなるのだ! えっ! このフライドチッキン! このカーネルおやじ!
 (2010.08.22)   このページのトップへ

『ボクたちの養生訓〜さんま編〜』79

 お盆休みも終わり、数センチ増えた腹回りを何とかしようと、ボクたちは食生活の改善に取り組んでいる。
 夕べは「さんま」を食べました。冷凍さんまです。今年は気候の影響でさんまが不漁だということをこの間、石巻の義兄(妻の真ん中の姉の夫)から聞きました。さんま大好き人間のボクたちとしては由々しき問題です。
 まあそれはそれとして昨日は冷凍さんまを焼いて食べました。かなりおいしい。1年中さんまが食べられるなんて冷凍技術の進歩に感謝です。
 で、その結果はどうだったかというと、体重、皮下脂肪、体脂肪とも改善の兆しがありました。(ボクたちは朝晩、ヘルスメーターで記録をとっているのです。偉いでしょ?)
「すっげえ!」   
「いい、いい、これ、いい、さんまちゃん!」
 味をしめましたよ、さんまダイエット。
「今日もさんまにしよう!」目を輝かせて妻が言った。
「あっ、もうないよ、さんま」冷凍庫管理者のボクの顔が曇った。
「ええええっ!! ないの?」
「うん、似たようなものなら・・・」冷凍庫の奥に手を伸ばしながらボクが言った。
 そんなわけで、今日は一夜干しの「いわし」と決まりました。肉が食卓に上ることはしばらくない模様です。
 (2010.08.22)   このページのトップへ

『さようなら鍛冶舎さん』78

 興南高校が勝った。高邁自主の鐘が鳴った。(これ興南高校の校歌のフレーズです)
 本当にいいチームだった。負けた東海大相模もあっぱれだった。熱い(暑い)夏をありがとう!
 しかし、この名勝負の陰で悲しいお知らせがあった。ボクらはNHKの放送が終わるまで観戦したのだが、最後に解説者の鍛冶舎巧さんがこう言ったのだ。
「四半世紀やってきた高校野球の解説も今回で最後になるんですねえ〜」
 高音で歌うようにしゃべる鍛冶舎さん。県立岐阜商出身の鍛冶舎さん。早大名バッターの鍛冶舎さん。接続詞のない歯切れのいいしゃべり方の鍛冶舎さん。アナウンサーとかぶることも多かったが最後までしゃべり続けた鍛冶舎さん。絶対に否定的なことを言わない鍛冶舎さん。そこにいるだけで和む鍛冶舎さん。ゴリラ(失礼)のような顔の鍛冶舎さん。竜雷太に似ている鍛冶舎さん。ジャイアンにも少し似ている鍛冶舎さん。お尻が椅子からはみだしていないだろうか、ちょっと気になる鍛冶舎さん・・・いろんな鍛冶舎さんが好きだった。   
「日本ほど高校野球の人気がある国はないですからねえ。まさに百花繚乱、たくさんの球児が高校野球を通して立派な社会人になっています。私はこれからも高校野球を応援していきます!」鍛冶舎さんは最後に明るくそう言い切った。
 ボクらは鍛冶舎さんが大好きだった。その鍛冶舎さんがいなくなってしまう。あなたのお陰で高校野球ファンになったといっても過言じゃないんだ、ボクたちは。悲しかった、寂しかった。
「今日の解説が鍛冶舎さんでよかったね」妻は、そう言って涙を拭った。
「うん、ずっと記憶に留めておこう」ボクは最後の鍛冶舎さんの名解説を深く心に刻み付けた。
 ボクは鍛冶舎さんのこの言葉が好きだ。

『野球のバッターは失敗が7割です。野球の選手は、失敗から学べる選手、失敗から学べない選手、失敗しない選手がいます。失敗に学べない選手は打てるようにならない、失敗しない選手も問題です。それはチャレンジをしないからです。失敗から学ぶ選手がプロになる選手です』

 そう言っておきながら、自分はプロに行っていないところがいかにも鍛冶舎さんらしい。謙虚というか何と言うか。とにかくあなたは偉大だった。25年間本当にありがとうございました!

 (2010.08.21)   このページのトップへ

『好球必打』77

 熱戦が繰り広げられた夏の風物詩「高校野球」も今日で終わる。寂しい。非常に寂しい。
 午後1時の決勝戦を前に、朝7時半、妻はトトトトトを始めた。仕事再開である。さすが代表、立派な人だ。ボクは例によって出遅れ気味で、今日の試合予測などをしながらボーッとしているわけです。
 『好球必打』というのは、いい球は逃さず必ず打つ、ということ。ボクは高校時代、軟式野球部に所属していたので、この言葉はよく聞かされたものだったが、それができないのが凡人の常。
 しかし、決勝に残った興南と東海大相模の打者は、それが当たり前のようにできるようだ。ピッチャーもそう。島袋君などは試合中に悪いところを修正できるらしいし、一二三君も尻上がりにスピードボールを放ってくる。全員ただ者じゃあない。
 さあ、どちらが頂点に立つのか、じっくり見納めてやろうじゃないか!  
 ちなみに我が家の「卓球甲子園」ですが、種々の事情で順延になっております。本物の甲子園が終わったところでプレイボールになる予定。
 今ボクはボーッとしながらトーナメント表を見つめています。それにしても、こんだけあったチームがたった2校になっちゃうなんてね。何だかキビシイね。
 (2010.08.21)   このページのトップへ

『恩師 湊潤二郎先生』76

 まだまだ本当にかくしゃくとしていた。『ジュンちゃん』の愛称で生徒に親しまれた恩師である。80歳になられたそうだ。
 ボクは恩師の言葉を、東栄と一緒にサシで聞くことができた。忘れないようにここに記録したい。
 『低空飛行した人ほど絶対落ちない』
 うわっ! いきなり含蓄のある言葉だった。学生時代、勉強では低空飛行をしまくってきた東栄とボクは、「そうだ!」と膝を打った。特に東栄は成績がビリだったので(正確に言うと、ビリだった人が亡くなったため実質上ビリになったのだが)この言葉が沁みたらしい。
 気を良くした東栄(弟子A)は勢いづいて聞いた。 
「先生、どうしてそんな俺たちを見捨てなかったんですか?」
 恩師、答えて曰く。
「どうしてボクが見捨てるか」
 弟子ら沈黙。恩師、続けて曰く。
「ボクのクラスの子供だもの」
 おおっ! 弟子ら一斉に泣く。
 恩師、同窓会名簿の紙を手に取って曰く。
「この名簿がボクには音符に見える」
 えっ?  弟子ら唖然。
「どういうことですか?」凡人の弟子Bのボクが聞く。
「子供たちの名前がボクには音符に見えるのだ。皆、それぞれの音でハーモニーを奏でている。ボクにはそれが聞こえる。成長した子供たちの歌が・・・」
 おう・・・。弟子ら絶句、脱帽、目が点。恩師続けて曰く。
「固定概念を捨てること。起承転結など考えるな。『結』だけの小説があってもいいだろう」
 書くことを生業にしてるボクに向かって、師は諭すようにそう言ってくれた。目からウロコだった。師の名語録はまだまだ続いた。
「数学の本質は哲学である。それはものの考え方だからである。数学をやれば哲学にいきつくのである」
 某有名予備校の「数学」の名物先生である東栄は、この言葉に激しく身を震わせうなだれた。あまりに高遠な悟りだったようだ。
 最後に師はこう言った。
「優等生は駄目。劣等生でも忍耐があれば鍛えられる。それが大事だ」
 劣等生のボクらがどれだけ励まされたか分からない。やはり恩師は偉大だった。
 (2010.08.20)   このページのトップへ

 

『夏祭りのあとさき』75

 夏祭りが過ぎてゆく 涼しい風に乗り
 君が着たかすりの浴衣 押入れの中かな
 今も思い出すあの日の 飾りの下で笑ってた かわいい君の姿
 夏祭りが過ぎてゆく 涼しい風に乗り
 君が着たかすりの浴衣 押入れの中かな 

 知る人ぞ知る、35年前の隠れた名曲『夏祭りのあとさき』である。知る人はボクを入れて5〜6人であるからして、知らないのが当たり前、気にしなくていいです。中学時代に作ったボクの曲だということは内緒にしておきます。
 さて、ボクらにとって今回のお盆休みは、まさに『夏祭り』と言っても過言ではなかった。いや、本当にお祭りでした。しょっぱな『夏祭りのあとさき』を知るマイノリティの友人たちが遊びにきました。例の「下駄を鳴らして〜」の東栄ファミリーとあるまんど山平です。朝の5時半まで飲んで歌って大騒ぎでした。翌日は高校の同窓会がありました。それから妻の実家に行きました。いやあ、遊びました。燃えました。飲みました。食いました。歌いました。
 そして今、この歌の心境なのです。祭りのあとの寂しさ・・・。あれは何だったんだろう、夢ではなかったか、幻ではなかったか・・・。
 妻の実家から戻ってきて、今3日ぶりに秋田の朝を迎えています。日中はまだまだ暑くなりそうですが、朝の空気は少しだけ秋の気配を感じさせてくれます。こうやって季節は移っていくのですね。
 今日は珍しくセンチな気分です。センチといえば、食べ過ぎで腹回りが数センチ増えたみたいです。妻もそう申しております。
 (2010.08.19)   このページのトップへ

『墓とミツバチ』74

 HIROMI GO の歌に「花とミツバチ」という歌があった。古いなあ。〜どうでもいいけど、帰るのいるの? 夜明けだよ、貧しいのはオイラの財布〜 確かそういう歌だった。ちょっと違うか。
 花とミツバチの相性はきわめていい。一蓮托生といっていいだろう。あるいはGIVE and TAKE 、持ちつ持たれつの関係、相思相愛、苦あれば楽あり(あれっ?)。
 それに比べて「墓とミツバチ」の関係はどうだろう。〜語呂は似てても心の錦〜(チータの「一本どっこ」の替え歌です。今日はこの手のダジャレが多いなあ・・・)
 ええ、普通この2つの関係は希薄かと思われる。ところが、この関係はとても蜜(いや)密だった。
 先日少しお話ししたが、うちの墓にミツバチが巣をこしらえていたのだ! しかも、これは相当でかいものだった。昨日お墓参りに行って分かった。墓の内部(つまり納骨室)を巣箱にして巨大なハチミツ工場が出来上がっている。開けて直接見たわけではないが、出入りするハチの数は半端じゃなかった。
 自治会長さんに教えられて養蜂業者にも電話をしていたのだが、「刺激しなければ刺されることはありませんよ」ということだったし、そもそも殺生が嫌いなので、ボクらはソッと手前に花を置き、供物と線香をあげた。しっかりそれ用の帽子も用意しておいた。(網のついたやつ)そして少し遠くから手を合わせた。
 ものすごい羽音でものすごい数のハチが巣穴を目指して、あるいは巣穴からブンブン飛んできた。かきいれ時なのだろう。
「相当採れるね。ハチミツ」ボクが言った。
「一升瓶、100本はいけるかと・・・」妻はどん欲だ。
 うん、養蜂業も悪くない。
 (2010.08.14)   このページのトップへ

 

『ナス、また100本!』73

 また来ました。ナス100本。
 でも、今回のナスは漬け物用の「ミズナス」という小振りのサイズのものです。
 それを袋いっぱい持ってきてくれた「ジャフ」さんというおばあちゃんは(ジャフさんの名前の由来は複雑なので割愛します。日本人です)、ボクたちに向かってこう言いました。
「おめだ、ナス漬けだごどあるが?」
「ないで〜す」
 ジャフさんはちょっと困った顔をして、「だども若い人だば本見でやれば大丈夫だ」と言いました。どうしても置いていきたいようです。
 かくして、ボクたちは100本のナス漬けにチャレンジすることになりました。
「案外おいしそうに漬かるかもよ」と妻。
「それにつけても100本はどうかと・・・」
 (2010.08.12)   このページのトップへ

 

『しょってます、保冷剤』72

 妻は発明家です。今回は、お金をかけずに「涼」をとる発明をしました。特許出願中ではありませんので、どうぞご自由にお試しください。
 発明の動機は毎日死ぬほど暑いこと、なのにエアコンがないことです。扇風機はかろうじて1台あります。1台なので部屋を移動する場合は扇風機ごと移動ということになります。
 妻の発明はこうです。クール宅急便で届いたものの中に、いろいろなサイズの保冷剤がありますね。あれを凍らせておいて首に巻く、というもの。サイズは小さめがいいです。大きいのだと巻いたとき「ムチウチのギブス」のようになって変です。昨日は小さいのがなくて、やむをえず大きいのをやりましたが、どう見ても保冷剤をしょっている格好になりました。
 また、凍っているのでタオルでしっかり巻いてあげないといけません。首が凍ります。
 これは本当に画期的にいいです。移動できます。省エネになります。サステーナブル、再生可能です。
「でも、この格好だけはどうだろう」カメのような格好でボクが聞きました。
 妻はこう答えました。「それを言っちゃあおしめえよ」
 (2010.08.12)   このページのトップへ

 

『行列ができるかもしれない』71

 3日続けてキッカリ朝8時に電話があった。
 1日目は村の自治会長さんからで、用件は「お宅のお墓にミツバチが巣を作っている。墓参りに行く時は危ないから気を付けるように」というものだった。ミツバチが巣を作っているのは知っていたが、駆除するのが不憫だったからそのままにしていたのだが、周りの人にも迷惑が掛かるのであればしょうがないなあ、と思った。
 2日目も村の自治会長さんからで、ご親切にも、今度は駆除する業者を教えてくれた。ボクは心から感謝の意を表し、電話を切った。
 3日目も8時に電話が鳴ったので、また会長さんだと思って出たら、今度はミセスホウレンさんだった。例のナスやキュウリをたくさんくれたおばあちゃん。
「あいい、何とか郵便局まで乗せていってけねが? 足痛くてなんも歩がれねえもの」。「あっ、いいですよ」と二つ返事でOKした。ミセスホウレンは独り暮らしのおばあちゃん(84歳)で、この間も野菜をもらった時、ボクは「何か困ったことあったらいつでも電話ください」と言っていたのだ。
 彼女を乗せて郵便局まで行く途中、いろんな話をした。「おめえ、これがらも頼むな」とも言われた。何だかボクたちには頼みやすいのだそうだ。お礼にまたしてもたくさんの野菜をいただいた。大きなメロンもあった。妻も大喜び。とっても気持ちのいい朝だった。
 ただ一つ、ボクが懸念してることがある。第2、第3のミセスホウレンが現れないか、ということである。『ヤッシーのアッシー君』みたいな形で朝から老人の行列ができないとも限らない。
 (2010.08.11)   このページのトップへ

 

『おぼんこぼん』70

 お盆が近いということもあって「おぼんこぼん」の漫才が聞きたくなった。
 さて、この「おぼんこぼん」だが、コンビ名の由来は「大きいボンボン」と「小さいボンボン」なのだそうだ。身長の大小は一目瞭然として「ボンボン」というのが分からない。
 「オール阪神巨人」は、大きい方が巨人だから自動的に小さい方(クッルマにポピー、ポピー、ポピー・・・の人)が阪神にさせられたのだと思うが、このボンボンというのは「いいとこのボンボン」というのとは無縁のようだ。よく分からない。
 おぼんの本名は「井上博一」という。こぼんの本名は「馬場添良一」という。どちらも立派な名前である。やっぱり「ボンボン」だったのだろうか。さらにこの二人はおぼんが漫才協会副会長、こぼんが理事である。立派な役職である。(ちなみに漫才協会の会長は青空球児である)
 青空球児といえば、今や高校野球が花盛りである。一気に話題がそっちへ行ったが、ボクたちは高校野球が大好きで、毎年この時期はテレビから目が離せなくなる。
 白球を追う球児たちの姿に涙し、解説者(特に鍛冶舎さんが好き)の名解説に膝を打ち、暑さも忘れて盛り上がっている。
 ただ見ているだけではつまらないと、ボクたちは密かに「卓球甲子園2010!」なるものを企画した。本物の甲子園とは別に、我が家の卓球甲子園大会である。腕が鳴る、血が騒ぐ。
 さあ、深紅の優勝旗はどこの高校に。せめて、卓球だけでも白河の関を越えてほしいものですね。ガムバルゾ! 
 (2010.08.09)   このページのトップへ

 

『つぶやきの次』69

 うちの事務所は「ワーディング&デザイン」で食ってます。文章を書くこと、ホームページなどをデザインすることを生業(なりわい)にしています。
 知らなかった! という方。そうなんですよ、毎日遊んでいるわけではありませんよ。
 さて、今日も早く起きたので、そういうちょっとまじめな立場で世の中の動きをあれこれ考察してみたいと思う。(パチパチパチ・・・)
 インターネットで人とコミュニケーションを取る手段にはいろいろありますね。「メール」はもとより、「2チャンネル」に代表される「BBS(電子掲示板)」、「チャット(おしゃべり)」、それから「ブログ」も普及してますね。個人の日記的なもの。周りを見回しても今や「ブロガー」だらけです。そして最近は「Twitter(つぶやき)」というものが人気です。
 人との会話がだんだん身近になってきています。スピードアップしてきています。そして、簡略化してきています。短い文章でよりリアルタイムに会話をする方向というか。
 インターネットがなかった時代を例にとって分かりやすく言えば、書簡が手紙やはがきになり、電報になって電話になってきたみたいな感じです。
 ツイッターなんかを見ていると、「おう、起きてるか?」「寝てた・・・」「起きろよ!」「腹減った」みたいな会話になってきましたね。
 これ以上会話が簡略化されたらどうなるんだろ? ボクはこうなると思うんですよ。「イヨーッ!」「ポン!」とか「あ?」「うん」とか、そういう方向。
 つまり「合いの手」ですね。もしくは「以心伝心」。「ケン」といえば「ホロロ」とか(これキジの合いの手)、「チュッ」といえば「チュッ」(これ鳥の合いの手です。恋人同士ではありません)、「ワン」といえば「ワン」(もちろんこれあれ)・・・。
 人間の会話は近い将来、このようにして限りなく動物の会話に近づいていくのかもしれませんね。ちなみにうちの朝のあいさつは「ニョ!」といえば「ニョ!」(これ「おはよう」の略。すでに動物化している)。
 ええ、ゴホン! うちの事務所は「ワーディング&デザイン」で食ってます。つまり、文章を書くこと・・・。
 あっ! 
 (2010.08.07)   このページのトップへ

 

『ホッキョクグマのゴーゴになりたい!』68

 もーいや! 暑い!
 (2010.08.06)   このページのトップへ

 

『ベン・ハーと朝バエ』67

 おはようございます。5時半に起きました。近所の人はみんな起きているようです。眠いです。
 33℃の予想最高気温に向けて、太陽は着実に準備を始めているようです。
 こんなに早く起きたのにはわけがあります。本当はもっと寝ていたかったのです。わけというのは「朝バエ」です。美しい「朝映え」ではなく「朝バエ」です。巨大なハエが就寝中の二人を襲ってきたのです。顔の周りをブンブンブン。
 それで仕方なく起きてしまいました。
 眠いのにはこれまたわけがあります。夕べのシアタータイムで「ベン・ハー」を観たからです。3時間半の映画です。もっとも、おととい前半(ボクらは「前・ハー」と呼んでいます)を少し観ていたので、実際は2時間の「後・ハー」だったわけですが・・・。
 それにしても今日のハエは、ベン・ハーの戦車レースさながらの戦闘能力だったなあ。執拗だった。ハエというよりもハチとかアブのようだった。体も大きかった。本当はアブだったのかな。取り逃がしたから分かりません。
 まあ、早起きは三文の得というし、暑くなる前にひと仕事しようっと。妻はそう言ってタタタタタタタ、トトトトトト・・・とやり始めました。
 ぼくは、まだ頭が全然回っておらず、したがってこうしてどうでもよいようなことを書きながら、ボーッとコーヒーを飲んでいるわけです。出遅れているのです。
 そうそう、昨日は肉を食いましたよ。ナスが付け合わせられてはいましたがね。ワインも飲みましたよ。うまかったなあ。滋養を取らなければこの猛暑はしのげませんものね。
 おはようございます。あっ、まだちょっとやっぱり眠いみたいです。出遅れています。
 (2010.08.06)   このページのトップへ

 

『侵出する妻』66

 侵出と進出では微妙に意味合いが違います。前者は人の勢力範囲に割って入ってくるニュアンスがあります。ちょっとずるい響きを含んでいます。
 妻が今盛んに「侵出」を試みているのは「つまみ」です。今、つまみの勢力図が塗り替えられようとしています。
 まず「光りもの」と呼ばれるものに侵出してきました。これは、長年ボクの独占市場でした。サバ、アジ、イワシ、サンマの刺身が主要アイテムですが、全部好きになってしまいました。
 それから海のパイナップル「ホヤ」です。いつの間にか妻の大好物になってしまいました。
 どうも、ボクがおいしそうに食べてるのを見ているうちに「あっ、私も!」となるようなんですが、侵出される側とすれば複雑です。
 そんなわけで、唯一妻が食べられないものは「生牡蠣」だけになりました。生牡蠣市場だけは必死に牙城を死守しているわけです。
 つまみに限らず、ありとあらゆる食べ物の中でボクが嫌いなものは「腐ったもの」ぐらいです。何でもよく食べます。そのボクに妻は激しく肉薄してきております。
 今日の秋田は遅ればせながらの「猛暑」。さて、今日は何を食べようかな。ちなみに昨日と今朝はご案内の『ナスぼっぽりうらめし炒め』で、8本のナスを制覇しました。
「今日こそはワインと肉、ねっ、ねっ、ねっ!」
 望むところだ!
 (2010.08.05)   このページのトップへ

『首輪を付けた犬』65

 エアコンがないので、窓を全開にしているといろんな虫が入ってきます。
 あっ、今、結構大きなハチのようなものが、羽音をブンブンたてて入ってきました! これは危ない!
 妻は全く気がつきません。ヘッドホンをしているからです。
 ハチは妻の頭の上を低空飛行で飛んでいるのですが、妻は知らん顔でタタタタタタタタタタタタタ・・・。
「あっ、危ない!」ボクは向かい側から叫びました。オーバーアクションでハチを指差しました。
「えっ?」やっと気付いた妻が、今度はものすごい形相で身をよけました。ハチの動きに合わせて逃げまどっています。あっ、ヘッドホンが落ちて首にかかりました。ひもがぶらさがっています。
 まるで『首輪を付けた犬』のようです。
 おっ! 犬は身をよじって机の下に入っていきました。どうやら犬小屋に逃げ込んだ模様です!
 (2010.08.04)   このページのトップへ

『だれどごにして!』64

「ああ、うなぎ食いてえ!」ボクが言った。土用うなぎの日に買った生協2尾セットのうち1尾残っていたからだ。(ボクらはけなげにも1尾を半分に切って食べたのです)今日、何だか急に暑くなってきたからでもある。しかし、最大の理由はナスに飽きたからだ。(夕べと今朝で、ボクらは焼きナス、揚げ出し、みそ汁などで10本もの巨大ナスを食った!)
「ああ、ハンバーグ食いてえ!」妻が言った。作り置きの冷凍ハンバーグが2つ残っていたからだ。しばらく肉を食っていないからだ。しかし、やはり最大の理由はナスに飽きたからだ。 
「その場合、ワイン飲みてえ!」妻がまた言った。赤ワインが1本残っていたからだ。 
「たまには別のもの食っても罰当たらないんじゃない?」もういっちょ妻が言った。いい、いい、赤ワインで乾杯! ボクも全面的にそっちに傾いた。
 が、しかし・・・。
「あっ、イカポッポつけてある」つまみ用のイカを思い出した。こればっかりは解凍してしまったので食うしかない。
「カツオのトンボ焼きも」もう一つのつまみも思い出した。これも同上の理由で変更不可。
「だめだ。ワインに合わない」
「最悪だ」
 かくして今日もナス料理ということになった。『ナスぼっぽりうらめし炒め』という名前が付いた。たぶん6本ぐらいははけるだろう。
 が、しかし・・・。
 が、しかし、やっぱりナス飽ぎだ。だれどごにして!(*これは石巻弁なので、正確には今度妻に訳してもらいます。何となく憤慨している感じ、分かってもらえますか?)
 (2010.08.04)   このページのトップへ

『ナス、お前もか』63

 昨日の夕方、ミセスホウレンから電話があった。ボクが出た。
「あいい、ナスばりいっぺでぎであど食いでぐねはあ、おめだちゃけるてがクレフグでこい」(訳)あいい(これは「あちゃ〜」みたいな感じの感嘆詞です)、ナスがいっぱいできたのでもう食べたくないのです。あなたたちにあげるから黒い服で来てくださいね。  
 ボクが出てよかった。妻じゃなくって。妻だったら何を言っているかさっぱり分からなかったはずだ。ボクは考えた。ナスをくれるのは分かったが、なぜ「黒い服」なのか? う〜ん、分からない。 
 あっそっか、人にやるところを見られるのが嫌なんだな。ボクはそう推察した。田舎では人のうわさが広まりやすく、ちょっとしたことでも近所の目が光っている、ということを知っていたからだ。ミセスホウレンがホウレンソウを持ってくるときも、いつも裏の畑を通って裏口からこっそり持ってくるのが常だった。
 それにしても「黒い服」を着てまで・・・。それじゃあまるで泥棒じゃないか。それに黒い服なんてあったかな? ボクは自分の着ている白いTシャツを見ながら思った。礼服が頭をよぎった。暑いだろうな、と思った。礼服を着てナスをもらいにいく自分を想像し、少し怖くなった。
「おばあさん、黒い服って言われても・・・」モジモジ言った。
「あえっ?」(これは驚いたときの感嘆詞です)
「いや、黒い服ないですが・・・」
「なんもや、クレフグでねぐクレフグロだ」(訳)そうでなくて、黒い服でなくて黒い袋ですよ。
 そっかそっか黒い袋かあ。それなら分かったぞ。中身の見えない黒い袋だったのか。なあんだ。 
「ああ、黒い袋ですか、はいはい、黒い袋持っていきます」察しのいい妻は、この会話を聞いていてこう思ったという。(えっ? うちに黒いゴミ袋あったかな? 町のゴミ袋は透明だしなあ・・・、どうしよう)
 結局、ボクは黒っぽいチェックの買い物袋を持ってミセスホウレンの家に向かった。
「なんぼ取っても取ってもまだなってくる。なんぼ食っても食っても年寄り一人だば1日2本だもの。おめだちゃ食わせるがらな、ほらっ」(訳 省略)ミセスホウレンはそう言って、よっこらしょと大きな袋を差し出した。
 重かった。はっきり言って相当重かった。巨大もしくは巨長なナスが30本以上入っていた。彼女は最後にこう言った。
「おれ生ぎでるうぢは、おめだちゃ食わせるがらな」(訳)おれが生きてるうちは、あなたたちに食わせますからね!
 ありがたかった。涙が出るくらい。
 ナスに関しては、ここ1週間で既に2軒のお宅から50本ほどいただいていて、毎日のナスのみそ汁、ナス焼き、ナスの揚げ出し、ナスを中心にしたオイスター炒めなど、頑張ってその8割を消化したところであった。
「う〜ん」ナスを見て妻が嘆息した。「う〜ん」ボクもそれにならった。その時だった。チャイムが鳴った。出てみると、スミさんという腰の曲がったおばあさんだった。
「あいい、おめだもいっぺあるべども食ってけれ」(訳)あなたたちもいっぱいあるかもしれないけれども食べてね。
 その通りだった。確かにいっぱいあった。だが、妻はそれを顔には出さずに笑顔でこう言った。
「うち畑やってないから、いつも買って食べてるんですよ〜」(マジッ!)
「んだがー、ひばまだ持ってくるがらなあ」(えっ?)
 スミさんは満面の笑みでそう言うと、巨大な袋を置いて逃げるように帰っていった。
 置き去られた大きな袋を前にして、ボクらは顔を見合わせてただ笑うしかなかった。
 (2010.08.03)   このページのトップへ

『キジはひなより悪声』62

 キジが近くに営巣していて、2羽子どもが生まれたことは前に書いた。
 これがまたものすごい悪声だ。  
 やっぱりなあ。 
 『栴檀は双葉より芳し』というが、この場合、『キジはひなより悪声』ということになるようだ。
 それにしても、ジメジメジメジメジメジメしてますね。
「パーッといこうぜ! パーッと!」と天を仰いで叫びたくなるのはぼくだけか。
 床掃除をしながら妻もこう言っている。
「ファイト〜、いっぱ〜つっ!」 なんのこっちゃ?
 そんな中で、雨に切れ間に鳴いているセミが実にけなげだ。地上で1週間しか生きられないんだもんな。がんばれ、セミ! 負けるな、セミ! 
 お前の声で夏を呼び戻しておくれ。
 (2010.08.02)   このページのトップへ

 

『卿に入れば郷に従うな』61

 去年から畑作りをやめていることは前にも書きましたね。現在、この村で畑を作ってない家はうちだけになりました。
 さぞ野菜に困っているのでは、と思いきや、それが逆なんです。かえっていっぱい野菜がもらえるのです。  
 うちが作っていた頃は、「作ってるがらあるべ」と思って誰も持って来てくれなかったのですが、作ってないと知るようになってからみんな持って来てくれるようになりました。昨日も近所のおじいちゃんからナス、キュウリ、トマト、インゲン(そのおじいちゃんはエンゲンと発音します)などをもらいました。 
 そんなわけで、こと野菜作りに関しては「卿に入れば郷に従うな」ということになりそうです。ちゃっかりしてますが。
 もちろん、先日のカツオとかそういう妻の実家からの「海の幸」と物々交換ということになるわけですが、「気は心」、こういうご近所との交流は気持ちいいですね。
 いろいろあった7月も終わってしまいます。
 今月はいっぱい書いたなあ。読んでくれた皆さんありがとうございました! 
 ずっと忙しくフル稼働していた妻は、なかなか書くことができませんでした。妻が隣で言ってます。
「私のことも忘れないで〜」って。
 大丈夫、大丈夫。十分このエッセイに露出してるよ。
 (2010.07.31)   このページのトップへ

『嵐の卓球大会』60

 夕べからの不穏な天気も一段落したようです。また地獄の熱射がきそうです。
 そんな中、ぼくらは相変わらず卓球をやっています。窓を閉め切ってやるのが卓球、汗だくでひたすら38mmの球の動きに反応するのが卓球、暑いほど燃えるのが卓球です。  
 トーナメント大会は計21回にもなり、ゲーム数は敗者復活戦を入れて1000試合にならんとしています。セット数にしたら4000〜5000ゲームはこなしたでしょう。 
 昨日も嵐の中やりました。室内ですが・・・。ぼくの7勝1敗でした。最後に疲れてきて妻に負けました。
 昔、「蛍雪時代」という本に書いてあった「継続は力なり」という言葉を思い出します。まさにぼくは今、それを実感しています。二人とも上手くなりました。本当です。オリンピックとはいかないまでも、国体くらいには出場できそうです。
 われこそは! と思われる方、お相手いたします。
 挑戦状を叩き付けてください。
 (2010.07.30)   このページのトップへ

『アニのウニ』59

 今から贅沢な話を書きます。羨望、妬み、嫉みは覚悟の上。
 アニからウニが届きました。兄から雲丹が届いたのです!  
 この兄は妻の一番上の姉(妻は三姉妹の末っ子です)の夫ですから義兄ということになります。 
 アニは社長さんですが、社長さんには珍しく、とことん気っぷのいい太っ腹な人です。(世の中の社長さんは案外けちくさいものです)
 アニは毎年、夏はウニ、冬はカニを送ってくれます。どちらも超高級品、高嶺の花、セレブ、ハイソサイエティ! あと何だ? とにかく、ローエンドからいきなりハイエンドになった気分。四畳半のぼろアパートから六本木ヒルズ最上階に引っ越した気分。
 アニ、ウニ、カニ、なんだか語呂もいいなあ・・・。幸せな響きだなあ。ちなみにアニの名前はカツジと呼んで『一二』と書きます。何だかみんな「○ニ」だなあ・・・。不思議な符合。
「ウニごはんだね!」
「もっちのろんよ」(これって死語?) 
「鼻血出ないように気を付けなきゃね」
「昨日、健康診断で疲れたから栄養つけなきゃ」
「そうだね、バリュウムのせいでおなかも壊したもんね」
「うん、ウニで壊すなら本望だ」
 ウニ、カニ、バンザイ! それにしても「○ニ」って単語いいなあ。幸せの語感っていうか・・・。あっ、ちょっと待てよ。オニってのもあるなあ。ワニってのもあるなあ。あっ、ヤニってのも、ダニってのも・・・。
 (2010.07.29)   このページのトップへ

『人生論』58

 近頃、身近で同年代の人の病気や事故の話を聞くにつけ、本当に健康であることがありがたく思えます。
 妻と最近こんな会話をしました。  
「私、ソバのように生きたいな。ツルツルとのどごしよく、さわやかに」 
「ぼくは、どちらかというとうどんのほうが好きだなあ」
「何気ない幸せを細く長く味わって・・・」
「そうめんもいいね、暑いし」
「それにつけても健康よね」
「そういえば、しばらくパスタ食ってないね」 
「健康で長生きしようね、ソバのように・・・」
「ぼくは、どちらかというとうどんのほうが好きだなあ」
「1回きりの人生だもんね」
「ちょうど天かすあったんじゃない?」
 もしも〜し、かみ合ってますかあ〜?
 (2010.07.29)   このページのトップへ

『キュウリ完食! と思いきや・・・』57

 その人はとても厳格な人だった。何やら厳しい顔をしていた。胃のレントゲン検査の前に注意事項を申し述べる方です。
「いいですか? これを2錠3杯の水で帰ったらすぐ飲んでくださいよ! いいですか? 3杯の水ですよ! それからできるだけ大量の水を飲んでくださいよ! それから野菜もたくさん採ってくださいよ! いいですか? 分かりましたか!!」
「は、は、はいっ!」妻も同じことを言われたらしいが、渡された小さな下剤をぞんざいにポケットにしまったぼくは、「だめだめだめ!」と怒られ封筒の中に入れさせられたのに対し、妻はきちんと財布の中にしまったそうで「そうそうそう、それは一番いいですね」とほめられたそうです。ずるっ!  
 そんなわけで、ぼくらは帰ってからその厳しい教え通りに薬を飲み、水を飲み、野菜を食べたのであった。野菜はもちろんキュウリである。キュウリは水っぽいので一石二鳥なのであった。お陰でとうとう完食! 
 ところが・・・。
 また来てしまった! お隣さんのS子さん。
 しかし、今回はキュウリもあったがそれだけではなく、ナスや食用ホウズキなどいろんなものが少しずつ入った『お野菜セット』というべきもので、妻は大喜びだった。
「まだ持ってくるがらな」S子さんはそう言った。やったあ!
 彼女は以前カツオをお裾分けした1人だが、ほったらかしの我が家の梅の実を取らせてもらったお礼もあったようだ。 
「梅、ありがどうね」
「なんも、なんも、勝手に何でもバンバン取ってください、遠慮なく」
 ぼくが言うと、妻は横でこういった。
「あと何かある?」
「う〜ん、あと雑草くらいか・・・」
 (2010.07.29)   このページのトップへ

『早朝健康診断の憂鬱』56

 タイトルを見て「分かる分かる。そうだよね。あれ、いやだよね」と思ってくれた方も多いと思います。
 朝早いし、バリュウム飲むし、注射(採血の)痛いし・・・。
 でも、そういうことじゃなくて、今日書きたいのはですね。確かに嫌ですよ。はっきり言って大嫌いなのだけれども・・・というお話なんです。ぼくはあまのじゃくなのです。  
 ぼくたちはここに来て5年連続で健康診断を受けているのですが(偉いなあ)この町の唯一の総合病院が経営的に危うくなってしまったので、今回から別の医療機関が担当することになりました。 
 秋田県○○医療事業団とかいう団体。ここ、とっても良かったんですよ。色々今までとシステムが変わったところがありました。箇条書きにします。
 受付時間が遅くなりました。(今までは5:15~7:00→これがなんと6:00~8:00)すごい!
 みんな優しくテキパキしてます。(今までは態度が悪く、ぼくは前回問診のところで怖いおばちゃんと口論になり、その後の血圧測定でものすごい数値を記録したことがあります)
 プライバシーの配慮が行き届いている。(今までは特に女の人への配慮が欠けていて、カーテンで仕切ってないこともありました)
 そういうわけで、今回は何だか気分よく検診を受けることができました。 
 特に妻は、別の理由でも非常に気を良くしています。
「あのね、私お医者さんに『やせててうらやましい』って言われたの」(ほんと? 医者もお世辞言うんだあ)
 もう一つ。
「あのね、私別の人に『ここら辺の人じゃないでしょ』って言われたの」(まあ、出身はそうだわな)
 (2010.07.28)   このページのトップへ

『決壊』55

 堤防などが切れて崩れること。
 この夏の集中豪雨では各地で起こったであろう「決壊」。
 実は、ここだけの話ですが、我が家でも昨日「決壊」がありました。  
 切れて崩れました。(あっ、あれだな!) 
 なかなかお察しがいい。そうです、あれです。あの宣言です。それが崩れました。気持ちも切れました。
 理由は幾重にもありますが、言い訳がましいのは嫌いです。言わないことにしましょう、男らしく。自分たちの意志薄弱が原因なのですから、はい。
 しかし、やっぱり言わせてください。それはね・・・。
 あっ、やっぱりやめよう。山平が急に遊びに来たとかそういうことは言わないでおこう。
 東栄から電話があって、楽譜を大量にFAXしてきたからとか、奥さんや娘さんも参加することになったとか、そういうことは言わないでおこう。 
 そういううれしいことが重なった結果、あえなく決壊したわけですが、本当はもうひとつ悲しいことが挟まっておりまして、まあ、これは今状況が状況なので書きませんが、とにかく人間というのは(そんなに広げていいのかよ!)楽しくても悲しくても「決壊」してしまうものなんですね。(お前らだけだろ!)
 決壊の後遺症は大きく、頭ガンガン、腹ピーピー、呼吸ゼーゼー、最悪な状況でございます。復旧には時間を要しそうです。
 あっ! 明日は早朝健康診断だった・・・。が〜ん!
 (2010.07.27)   このページのトップへ

『青い夏』54

 そういう名曲がありますね。伊勢正三の。

 〜 青い夏 風が近づく ミカンの白い花  好きなのに 離ればなれを ずっとうらんであげる 〜

 今年はかつてなく古い友達との交流がある年です。そういう年回りなのかもしれません。  
 お盆にも友達が我が家に訪ねてくる計画があって、それは以前紹介した山平と東栄なんだけど、それに妻の友達が加わる予定もあります。
 みんなかつてそれぞれにバンドを組んでた連中です。現役のプロもいますが、妻たちのグループ(ZIP)も、当時「ポプコン」で準優勝した立派な実績を持っています。
 みんな似たような青春時代を送っていたので、きっと朝まで盛り上がることでしょう。
 青い夏かあ・・・。そういえば吉田拓郎の歌にも『蒼い夏』というのがあったなあ、こちらもいい曲です。

〜 君は夏みかん剥きながら 早く子どもがほしいな わざと言ってため息ひとつ 〜

 なぜかミカンが共通してるなあ。う〜ん。夏はミカンなのかなあ・・・。 
 そういえば『白い冬』というのもあったなあ、ふきのとう。やっぱ冬は白、夏は青だよなあ。 『青い冬』『白い夏』ではピンとこないもんなあ。
 じゃあ『茶の秋』ってのはどうだろう。全然詩的じゃないなあ。 どっかのお茶会みたいだなあ。
 春は何だろう。『桃の春』? なんか入浴剤みたいだなあ。う〜ん。
 (2010.07.25)   このページのトップへ



『新習慣』53

 全国的に暑い日が続いています。でも、ここはなぜか涼しいのです。25℃くらい、まるで軽井沢のよう。すみません、暑い地域の方。
 ところで、焼酎1日1人1合宣言をして以来、ぼくたちの夜の生活が変わりました。画期的に変わったのです。
 まず、ずっとDVDに録画してあって観られなかった映画が100本以上もあったのですが、それを毎日観ております。大体PM8:30くらいから見始めます。
 何を観るかはこういうふうにして決めます。 
「何組ですか?」(DVDのケースはA、B、Cとあります)
「B組お願いします」
「何番ですか?」(それぞれ30枚くらいあります)
「23番お願いします」
「何番目ですか?」(1枚のDVDには2〜3作品入ってます) 
「2番目お願いします」 
「分かりました。ではえーと、今日は『ロビンとマリリン』で〜す」みたいな。 
 言ってみれば抽選ですね。何を観るかは時の運。これはこれでなかなか楽しい。予想もしなかった映画、タイトルを見ただけでは選ばないだろう映画にお目に掛かれます。
 ちなみにおとといはサリー・フィールドの『Place in the Heart』だったし、その前の日は昭和12年山中貞雄監督の『人情紙風船』でした。かなり意表を突く終わり方でした。
 もう一つこの時間の楽しみがあります。へへっ、デザートが食べられるんですね。ケーキとかフルーツとか・・・。えっ? そっちのほうが楽しみなんだろうって? ええ、まあ確かに・・・。
 (2010.07.24)   このページのトップへ

『暑さ対策』52

 日本列島、猛暑に見舞われている。
 昨日は多治見で39.4℃だったとかで、これはもう人間の体温でいえば微熱を通り越して高熱、うなされる状態だ。35℃以上の猛暑日を記録した所も多かった。ちなみにここは31℃くらいでまだかわいかったようだ。
 まだまだこの暑さは続くそうだ。そこで、ぼくは我が家における暑さ対策を紹介してみたくなった。どうせ、大したためになる話じゃないだろう、そう高をくくって聞いてほしい。
1.まず、笑わないこと。笑うと暑くなります。 
2.動かないこと。動くと暑くなります。
3.しゃべらないこと。しゃべると暑くなります。
4.仕事をしないこと。仕事をすると暑くなります。
5.最後に、食べないこと。食べると暑くなります。
 おいおい、食べなきゃ死ぬだろうが! 仕事をしなきゃ食っていけないだろうが! 
 熱中症で死ぬのと、餓死するのとどっちを取るか? そういうアホな議論はこの際置いといて、4と5はやはり現実的ではないでしょう。その通りです。おっしゃる通りです。
 それ以外の対策はお勧めです。 
 ただ、一つ副作用がありますのでご注意ください。
 これやると、確実に夫婦仲が悪くなります。
 (2010.07.23)   このページのトップへ

『キュウリ封じ』51

「病気をキュウリの中に封じ込める『キュウリ封じ』が21日、京都市北区の神光寺で営まれた。家族連れやお年寄りらが訪れ、病気平癒や無病息災を祈願していた。キュウリ封じは平安時代に弘法大師が中国から伝えた。病を封じたキュウリを地中に埋め、土に返るのと同時に病も消滅すると信仰されている。本堂では名前を書いた紙を巻いたキュウリが供えられた。祈祷を終え、参拝者はキュウリを受け取り、具合が悪い部分をさすり、健康を祈った」(京都新聞記事より抜粋)
 おお〜! あった、あった、大量キュウリの利用法が!
 あっ、ちなみに最近読者になられた方のために、なぜ我が家にたくさんキュウリがあるのかを時系列的にご説明します。
 石巻からカツオが大量に届きました→妻の発案で村の人々に配りました→その時お返しに各家庭からキュウリを大量にいただきました→結果、100本を超えるキュウリが在庫されました→在庫調整をすべく毎日たくさん食べました→一部腐ってきました→飽きました→困っています。
 お分かりいただけたでしょうか? 
 そんな折も折り、この記事を見つけてしまったのですね。
「やってみようよ、このキュウリ封じ」
「おもしろいけど、ちょっとものを祖末にしてる感じない?」
「でも、このまま在庫過剰で腐らせるよりはいいと思うが・・・」
「ただ一つ問題があるよ」
「えっ?」
「具合が悪い部分をさするって、どこをさするの?」 
 そうであった。うかつだった。封じ込める病気がないのであった。
「頭でもさすろうか、少しは良くなるかもよ・・・」
 (2010.07.22)   このページのトップへ