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★エッセイ『ことなひまめのオッペケペーですっとこどっこいな日常』
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『タイガーマスク現象』400

 タイガーマスクの伊達直人の名前で、福祉施設などに、ランドセルなどの贈りものが届きまくっているらしい。
 まだ人との心の絆があった、40代〜60代のタイガーマスク世代の人たちが、今の社会に対する不満を、そういう形で表現しているのだろう、とコラムニストの天野祐吉さんは分析していた。
 タイガーマスク世代といえば、ボクも妻もそうである。
 思い出すのは、ボクが小学生の頃、何かの懸賞に応募して、『タイガーマスクのマント』が当たったことだ。
 あの時はうれしかったなあ。
 そんなどうでもいいことを思い出している場合ではなかった。
 ボクらも何か送らねば! タイガーマスク世代の名折れになってしまう。
 何かないか?
「案外貧乏になってきたよ」
 家計簿をにらみながら妻がそう言ったので、ボクのタイガーマスク熱は急速にしぼんでしまった。

 (2011.01.12)   このページのトップへ

『クロソイおばはん』399

 昨日、風邪ひきのボクに、妻は「リンゴ」と「レタス」をごちそうしてくれた。
「風邪ひきさんには草と果物よ」と言って。
 草食系オヤジ・・・。
 一方の妻は、「タラとホタテとムール貝のクリームソースがけ大盛り」を完食した。
 「クロソイ」のような食いっぷりだった。
 クロソイおばはん・・・。

 (2011.01.12)   このページのトップへ

『才子は病多し』398

 風邪はまだ治っていない。
 ボクって「才子」?

 (2011.01.12)   このページのトップへ

『方丈記の諦念と達観』397

 ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人の「すみか」もまた、かくのごとし。
 広さはわずかに方丈(3メートル四方)。
 それ人の友とあるものは、富めるを尊び、懇(ねんごろ)なるを先とす。必ずしも情あると、素直なるを愛せず。
 もし、なすべき事あれば、すなわちおのが身を使う。たゆらからずしもあらねど(面倒で疲れていても)人を従え、人を顧みるよりやすし。もし、歩くべき事あればみずから歩む。苦しといえども、馬・鞍・牛・車と心を悩ますにはしかず。

 鴨長明の諦念と達観は、誠に共感できるものである。
 共感はできるが、不肖のボクはまだそういう域に達していない。
 コーゾーさ〜ん! 薪、お願いしま〜す! できれば屋根の雪下ろしもお願いしま〜す!

 (2011.01.12)   このページのトップへ

『不吉な夢を見た』396

 風邪の熱のせいか、よく夢を見る。
 昨日は、小屋が雪の重みでつぶれる夢を見た。
 起きて確認したら、モッコリ雪が1メートルも積もっているものの、まだつぶれてはいなかった。
 ホッと胸をなで下ろしつつも、いよいよ「雪下ろし」だな、と思った。
 小屋だけではない。家本体もそろそろ危ない水域に入っている。
 生命の危機・・・。
 今朝、洗面所の床で滑って転びそうになった。
 スケートリンクのように、凍ってツルツルになっているのだ。
 生命の危機・・・。
 薪ももうない。コーゾーさんはまだ来てくれない。
 生命の危機・・・。
 昨日の夢が正夢にならないことを祈るしかない。

 (2011.01.12)   このページのトップへ

『ビビれ! ビビれ! ビビれ!』395

 全国的に今年一番の冷え込み。
 不謹慎なのは重々承知で、「やりぃ!」なのである。
 北見マイナス18.9℃。水蒸気が凍る「ダイヤモンドダスト」はもちろん、川には「フロスト・フラワー」が咲いていた。あれってきれいだね。
 四国までマイナスだというからには、東栄のいる取手だって相当寒いはずだ。
 「やりぃ!」
 自分だけ貧しいとき人は世をねたむものだが、全員が貧しければそういうことは起こらない。 
 ロシア革命もフランス革命も、貧民の貴族に対する「ねたみ」、不条理に対する「怒り」が原因だ。
 そういう意味で、今回の「全国的な冷え込み」は、暴動や革命の火を沈下させたといえよう。
「へへっ、みんな、ビビれ! ビビれ! ビビれ!」
 ボクが、そう言っていやらしく笑うと、妻は軽快なトーンでこう歌った。
「ビビれ、バビれ、ブー!」

 (2011.01.12)   このページのトップへ

『妥協・打算・惰性』394

 この3つに共通する『ダ』。
 名付けて『3ダ』!
 そう言えば、「サンダー杉山」っていたなあ。
 それはいいとして、年をとると自然に、この『3ダ』が多くなるようだ。特に夫婦間。
 で、ボクらは昨日、この『3ダ』について論じた。風邪気味だったけど頑張った。
 ありとあらゆる夫婦関係を分析し、ボクらは一つの結論を得た。 
「ボクらにはこれがない」という結論。
 その結果、どうしても喧嘩が多くなる、ということも分かってきた。
「私たちに必要なのは『理性』ね」
 と、妻が言った。確かにそうだ。
 今年、まだボクらは喧嘩をしていない。理性が勝っているのだろうか。
 いや、ボクに挑む勇気がなくなったからだけかもしれない。

 (2011.01.11)   このページのトップへ

『充電式暖房スリッパ』393

 熱にうなされながら夢を見た。
 タイトルのような発明をした夢。
 『頭寒足熱』のことは何度も書いているが、ボクの発明はこうだ。
 ホッカイロも使い捨てなので、毎日貼っていると結構コストがかかる。
 そこで、充電池であったまるスリッパがあれば、繰り返し何度でも使えるのではないか、というアイディアである。
 我ながら素晴らしい発想だと思って、夜中の3時頃目が覚めて、何かに書き留めようとしたが、熱で体が重く起き上がれなかった。
 ボクは今、こうしてここに書き留める。そのことによって、いわゆる「先願権」を主張するものである。 
 風邪が治ったら、いろんなスリッパ会社に売り込みたいと思っている。
 えっ? 売れない? 
 どうしてですか? 時代は『頭寒足熱』ブームなんですよ。
 絶対いけると思うんだけどなあ。

 (2011.01.11)   このページのトップへ

『唾液感染』392

 風邪をひきました。
 頭痛、発熱、悪寒、喉がやられております。
 原因はここのところの尋常じゃない寒さのせいもありますが、「唾液感染」によってうつされたことは明白です。
 妻からかって? いいや、妻はピンピンしてます。
 愛人かって? いいや、そんな甲斐性ございません。
 犯人は分かっているのです。
 通称「ネギ」です。男性、学生です。 
 ホモかって? いいや、そういう趣味ありません。
 彼は正月、宇都宮の実家に帰って3キロ太って帰ってきました。フツーのネギが「深谷ネギ」になった感じです。
 おまけに、風邪をひいて帰ってきました。これは毎年恒例らしいです。あるまんど山平がそう言ってました。
 その彼と、おとといサックスのマウスピースを共有しました。そのことが原因で、ボクは風邪をもらってしまったのです。
 「ネギ」に罪をなすりつけるのは可愛そうなのですが、やっぱり犯人は彼以外にいません。
 そういえば「グリンゴ」も風邪気味だったな。あいつかな? いや、やっぱ犯人は「ネギ」だ。絶対「ネギ」だ。あいつ、執拗に吹いていたもの。
 ボクは虚弱なのです。学生とは違うのです。若くないのです。風邪うつさないでください。
 こうやってエッセイなど書いている場合ではないのです。本当は寝たほうがいいのです。
「ネギ、喉に巻いて寝るといいよ。喉痛いんでしょ?」
 妻は、嫌な名前を口に出しました。
 「ネギ」・・・。おぬし!

 (2011.01.11)   このページのトップへ

『雪かく人』391

 今日の最高気温はマイナス3℃、最低気温はマイナス5℃。
 おおむね明日も同じ。
 1時間以上も前からストーブをバンバン焚いているのに、部屋の気温は7℃。
 今起きてきた妻が言った。
「んもう、いい加減にしてくれない!」
 そう言って洗面所から帰ってきた妻は、今度はこう言った。
「あんまり寒くて涙が出た。タオルも凍ってた。たまげたもんだよ、屋根やのふんどし!」 
「それを言うなら、見上げたもんだよ、だろ?」
 鋭い突っ込みを入れた。入れたものの冴えがない。寒いとジョークも凍ってしまう。
 コーヒーを入れようとしたら、昨日の豆かすが凍っていた。
 カーテンを開けようとしたら、凍って窓に張り付いてビリビリ音を立てた。
 着替えが終わった妻は、
「よし! 今日は雪かきするぞ!」と言った。
 この人は、なぜか雪かきに燃える。その姿がまたかっこいいのだ。
 ゴッホの絵『種まく人』さながらの、腰の据わったいい姿勢で、スコップで雪を放り投げる姿は実に美しい。
 『雪かく人』。
 台所で洗い物をしながら、ボクはその人をうっとりと見つめている。

 (2011.01.10)   このページのトップへ

『福袋』390

 スーパーAMANOで売れ残った『福袋』が安く売られていた。
 最近の福袋って中身が見えるんですね。知らなかった。
 売れ残った福袋っていうのは何だか切ないね。
 それは「売れ残ったものが、チャンスを与えられながら、それでもやっぱり売れ残ってしまった」からなのだろう。
 売れ残ったシャンプーや、売れ残った歯ブラシや、売れ残った靴下・・・。
 「残り物には福がある」
 そう思ったが、やっぱり買う勇気はありませんでした。 

 (2011.01.10)   このページのトップへ

『天上大風』389

 南木佳士という作家がいる。
 『阿弥陀堂便り』は映画化された。
 「花見百姓」と揶揄されていた主人公、孝夫がこんなことを言っている。

 この村で何を見、何を感じたか、現実の重みをしっかりと身につけ、計らず、あるがまま、小説に命を与えてゆきたい。
 そして、『何ごとも大切なのは姿なのだ』『姿はその人の心を映す』そう言った先生の言葉に耳を傾け続けよう。

 こうした清冽なる思いがあれば、ボクも立派な作家になれるのだろう。 

 (2011.01.09)   このページのトップへ

『絶対鳥は飼わない!』388

 『鳥』を観た。ヒッチコックの代表作である。
 最初、ヒッチコック自身が、犬を2匹連れてペットショップから出てくるあたりまでは余裕だった。
 軽い、軽い、と思っていた。
 見終わって、ボクらは戦慄しながら部屋の中を見回した。
「一発だね」
「奴ら、どっからでも入れるね」
「屋根からでも、床からでも、壁からでも、窓からでもやられるね」
「絶対に鳥は飼わない!」
「何がラブバードだ!」
 鳥に襲われて死んだ人の凄惨な映像がまぶたに浮かんだ。
 怖い!
 妻は、次に予定していた映画『サイコ』を、観ないと言い出した。
 ボクもどうしようか悩んでいる。 

 (2011.01.09)   このページのトップへ

『干し柿っていつ食べんの?』387

 我が家の干し柿は順調な仕上がりを見せている。
 1回目は青カビで全滅し、2回目も数個カビたが、残りの20個ほどは順調に干されているようだ。
 だけど、これって一体いつ食べんの?
 いつまで干せばいいの?
 えっ? もういいんですか?
 そうですか。じゃあ食べてみますけれども、あれから数ヶ月たっているので、何となくちょっと抵抗があります。
 何か、もういいような気もしてくるのです。
 これって悪いことですよね。
 怒られそうですよね。
 たまたま今、果物がいっぱいあるからって、こういうことを言うと罰が当たりますよね。
 ごめんなさい。ちょっと正直に言ってしまっただけなんです。 

 (2011.01.09)   このページのトップへ

『体中にホッカイロ貼りたい!』386

 わお! である。
 おととい辺りから最高気温が氷点下でなのである。
 しかも、この1週間予報を見ると、ずっとそうなのである。
 明日などは最高気温がマイナス4℃なのである。
 信じられますか? 皆さん。
 最高でマイナス4℃なんですよ!
 どうすんのさ! どうしろっていうのさ!
 隙間だらけのボロ屋の中で、一体どうやって暮らせというのさ!
 タイトルの発言は妻である。
「過酷だね」
「薪もなくなったね」
「ホッカイロもあと少しだね」
 ボクたちは果たして春まで生存できるだろうか。
 それにしても、コーゾーさん! 早く薪お願いします! 
 お年始に『金粉入りの吟醸酒』持って行ったじゃないですか! 
「そろそろ薪ないです」って言ったじゃないですか!
「分がった、分がった」って言ってたじゃないですか!  

 (2011.01.09)   このページのトップへ

『真っ向サービス』385

 曜日感覚のないボクらは、昨日が土曜日であることも知らずに町へ用足しに出た。
 郵便局で現金書留を出すためであった。妻の友人(昔のバンド仲間のリーダーIちゃん)のだんなさんが事故に遭ったので、そのお見舞いを送るためだった。
「あっ!」
 郵便局の入り口は閉鎖されていた。ボクらは、そこで初めてその日が休日であることを知った。
「どうする?」と妻。
「どうするもこうするも、こうなったら強行突破だ」
 そう言って、ボクは裏口に回った。その時、クロネコヤマトのトラックが目の前を横切った。
「ったく、これだから郵便局はダメなんだよ。民営化したって公務員と同じじゃないか!」
 憤慨していた。憤慨しながら裏口の扉を開けた。誰もいない。
「ほらね、これだから・・・」
「何か御用でしょうか?」
 人の良さそうな若者が、気の弱そうな声で近付いてきた。
 用向きを伝えると、若者はこう言った。
「送ることはできるんですが、現金書留の封筒は売ることができません」 
 えっ? どういうこと? そこにいっぱいあるのに? なんで? 
「でたよ、公務員」と思った。
「もしよろしければ、扱っているお店に電話して確認してみます」
 彼は申し訳なさそうにそう言った。
「え、ええ・・・」
 それから彼は10数件の店に電話をかけた。プッシュ音が大きく、扉の外に待たされているボクらの耳に響いてきた。
「こちらは日本郵便ですが、すみません、そちらに現金書留の封筒はございますか? あれば1枚ゆずっていただきたいのですが・・・」
 おかしな話である。君たちが現金書留封筒の大元締めなのである。
「何言ってんだ、お前。お前んとこの引き出しに何万枚もあるべよ」お店の人はそう思うはずである。
 町内のお店というお店に電話をかけたお兄さんだったが、どこにも在庫がないようであった。君の誠意は分かったよ。また出直すよ。そう思っていた時だった。
「あっ、八郎潟の○○商店ですか?」
 おい! 八郎潟? 隣町まで買いに行けってが! その引き出し開ければ入っているだろうが! 20円のために隣町まで行けってが!
 幸いそこの店にもなかったようだったが、彼はまだあきらめていなかった。集配を終えて帰ってきた年配の局員も巻き込んで、更なる追跡は続いた。
「あった、ありました。すぐそこの坂専商店。いやあ、灯台もと暗しでした」
 満面の笑みで彼がやってきた時、帰るに帰れないボクらは外で凍えていた。
 「真っ向サービス」
 民営化になる前の郵便局のキャッチフレーズを思い出した。
 その通りだ。これも「真っ向サービス」かもしれない。君に罪はないだろう。
 でも・・・。
 封筒はそこの引き出しの中に、「死ぬほど」あるのである。  

 (2011.01.09)   このページのトップへ

『初鍋』384

 昨日は、今年初めての「お鍋」だった。
 2011年の初鍋は「キムチ豆乳鍋」と決定していた。
 この鍋はキムチで決まる。キムチの味がすべてを決めると言っても過言ではない。
 そういうわけで、ボクらはスーパーAMANOのキムチコーナーの前で、30分以上も激論することになった。
 白菜の生産地、添加物、色、成熟度合い、値段などチャック項目は多岐に及んだ。味だけが確かめられない。なかなか決め手がつかめない。
「よっしっ! こうなったら名前で決める!」
 そう言って、ボクは最後の英断を下した。
 『極!』KIWAMI 298円
 これがうまかったのよ。死ぬほどうまかったのよ。
 豆乳を入れてまろやかにする必要なし。サイコーにうまかったのよね、これ。
 皮下脂肪3割UPになったけど、もう気にしてないのよ。うまかったからもういいのよ。
 ちなみに、今日のお昼は、残りの鍋にチーズを溶かしてご飯を入れて『キムチリゾット』なのよ。腹がグーグー鳴っているのよ。
 興奮した妻は起きてきてこう言ったのよ。
「ああ、早く『気持ちリゾート』食べた〜い!」 
 その気持ち、分かるのよ。

 (2011.01.09)   このページのトップへ

『やなヤツ』383

 「今日の千葉県柏市」というタイトルでメールが届いた。
 「関東はいい天気でしょ。ただそれだけのメールです」そう書かれていた。
 紺碧の青空が添付写真に写っていた。これである。

取手

 送ってきたのが誰かは、写っている建物で明白であろう。
 やなヤツである。ちなみにこれが当方の天気である。

秋田

 ね、やなヤツでしょ。

 (2011.01.09)   このページのトップへ

『ザコのトト交り』382

 『雑魚の魚交り』というのは、身分や能力が不相応な中に交じっていること。
 『ごまめの魚交り』とか『エビの鯛交り』とも言う。
 何と言われようが、今年は小説家になる! そう決意しております。
 小説家を目指して苦節10年、多少の印税はもらったことはあるけれど、ボクはまだまだ『雑魚』であります。
 『ごまめの歯ぎしり』と言われようが、『石亀の地団駄』と言われようが、今年こそ! といきり立っているのです。
 早くトト(魚)になりた〜い! と叫んでいるのであります。
 新人賞を取りたいです。

 (2011.01.08)   このページのトップへ

『トシゾーさんのこと』381

 本名は「ヨシオ」なのですが、ボクらは親しみを込めて(?)なぜか「トシゾーさん」と呼んでいる人がいます。ボクの実父です。
 彼は2年ほど前に「特別養護老人ホーム」に入りました。
 時々面会に行っているのですが、本当に「死ぬほど元気」で、クリスマス会でトナカイを演じたり、カラオケで「北国の春」を熱唱したり、運動会で「選手宣誓」をしたり、ありとあらゆるレクリエーションにフル出場し、顔色も紅顔の美少年、悪いとこ一切なし、もう書ききれないくらい『元気』なのです。
 秋田に来て5年ほど一緒に暮らし、祖母が亡くなってからは、その「自己中心的自閉症的あなぐら的性格」に、こっちがノイローゼになるほど手を焼いたのに、今は「我が世の春」を謳歌している。
「施設向きだったんだよね、ホントに」
 施設で見る彼の「まことに晴れやかなるのびのびとした顔」を見るたびに、また、施設から送られてくる「苑通信」を見るたびに、ボクらはいつもそう思います。
 介護担当の人からのメッセージにはこう書いてありました。
「100まで生きると目標を立て、自分で筋力トレーニングを始めました」
 恐るべし、トシゾーさん、83歳。

 (2011.01.08)   このページのトップへ

『セミ男』380

 「オシクラまんじゅう」という饅頭がありますね。
 あれと同じ原理で、寒い時は「体を何かにこすりつける」のがいいのです。あったまるのです。
「ミ〜ン、ミンミン・・・」
 妻の体をカエデの樹になぞらえて、ボクはそうやって暖をとる癖があります。
「ミ〜ン、ミンミンミンミン・・・」
 妻は迷惑そうにこう言います。
「じゃまだ! セミ男!」

 (2011.01.08)   このページのトップへ

『うす皮危険』379

 石巻からもらってきた『味噌カステラ』なるものを、シアタータイムに食べよう、ということになった。
 切ってラッピングしていた妻が言った。
「あっ! うす皮が付いている!」
 1個だけ「うす皮付き」のカステラがラッピングされてしまった。
 間違って「うす皮付き」のまま食べてしまわないように、普通の人はこう考えるだろう。賢明な人ならば絶対そうするはずだ。
 ラッピングを外して、うす皮を取って、もう1回ラッピングする。
 もしくは、面倒くさがりの人はこう考えるだろう。
 まあ、食べれば分かるわけだから、その時皮をはがせばいいや。
 ボクらは違う。
「ちょっと待って、マジック持ってくる」
 かくしてこうなった。
 こういうバカな方法を選ぶのが、どうもボクらのようなのです。

うす皮危険

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『不覚、いいちこ』378

 昨日は「いいちこ」で不覚を取った。
 ここんとこ、お正月モードで「日本酒」や「ワイン」を飲むことが多く、ボクらの定番「いいちこ」の出番が少なかったのだが、昨日久しぶりに飲んだ。
 だが、大した量も飲んでないのに、しこたま酔っぱらった。
 最近、映画が観たくて早めに晩酌タイムを切り上げるので、同じ量を飲んでも酔っぱらい方が違うのかもしれない、と思った。
 いつもは6時間かけて飲む量を2時間で飲めば、やっぱり体内アルコール濃度が違うのだろう。当たり前のことだな、これは。
 しかも、昨日は濃くして飲んだことも敗因だろう。いつもの「10倍薄め」を「3倍薄め」ぐらいにして飲んだのだ。
 原因は明らかだが、結局、妻はヒッチコックの『鳥』の序盤、まだ平和な展開の途中で気持ち悪いと言い出し、ボクも何だか眠くなり、9時前に床に入った。
「量を減らそう」
 そういう結論になった。

 (2011.01.08)   このページのトップへ

『朝の挨拶』377

 起きてきた妻に言った。
「お寒うございますなあ」
 妻は言った。
「お寒ちゃんで〜す!」

 (2011.01.08)   このページのトップへ

『何やってるんだろうなあ、みんな』376

 毎年、冬になるたびに気になっていたことがある。
 この期間、村のお百姓さんたちは何をしているのだろうか?
 昔なら、わらじを編むとか、何かしら仕事もあったと思うのだが、今はそんなことをやっているはずもない。
 何もやることがないこの時期、彼らは一体いかにして生きているのだろうか。 
「ストーブにあたって、テレビ見てんじゃない?」 
 と、妻。おそらくそうなんだろうな。
 だがしかし、毎日それじゃあ飽きないだろうか?
 秋田の冬は長い。ほぼ半年近くが冬である。
「ず〜っとそうしているのかなあ」
「まあ、女の人はお茶飲みとかやってるかもしれないけどね」
「そっか。じゃあ男の人たちはヒマだよねえ。特に男の独り暮らしは」
 農繁期、あんなに寸刻を惜しんで働いていた彼らにとって、冬のヒマさは一体どんなものなんだろう?
 そう言えば、年末スーパーAMANOで買い物をしていた時、チョロQさんにバッタリ会ったことがある。彼は若くに奥さんに先立たれ、それからずっと独り暮らしだ。
 彼は、買い物カゴも持たずに野菜コーナーに立っていた。そして、ボクらを目ざとく見つけて近付いてきた。
 そこで、ひとしきりたわいもない立ち話をした。買い物カゴを持っていない理由を尋ねると、彼は頭をかきながらこんなことを言った。
「家さいでもヒマでヒマで、別に買い物もねえども来てるんだあ。誰がいるがど思って」。
 ホントにヒマなんだろうなあ。誰かと話がしたいんだろうなあ。みんなそんな感じなんだろうなあ。
 秋田の自殺率が高いことと関係あんのかなあ。
 『NPO冬期限定お話隊派遣』なんてどうだろう。悪くないんじゃないかなあ。 

 (2011.01.07)   このページのトップへ

『親愛なる人』375

 親愛なる人、その名は「カッツ」。
 親愛なる人、その関係「義兄」。
 親愛なる人、その地位「社長」。
 あなたのお陰で、ボクらは今までどれだけ珍しいものを口にできたか。
 あなたがいなければ、おそらく一生食べられなかったであろうA級グルメの数々。 
 「カッツと言えばカニでしょ!」でおなじみの「カニ」。 
 「カッツと言えばウニでしょ!」でおなじみの「ウニ」。
 そして今回は「どでかい新巻鮭」1本、ドンッ!
 解体して25切れほどになったその「どでかい新巻鮭」の1片を、さっき初めて食べました。
「なんだこりゃ?」(ボク談)
「これ何?」(妻談)
 それは、「カッツと言えばシリーズ」に、新たに「シャケでしょ!」が加わった瞬間でもあった。
 ああ、親愛なる人、その名は「カッツ」。
 どうかいつまでも「社長」さんでいて下さいね。そしていつまでも・・・。
 えっ? 来年定年なの? マジッ? そっか、彼は雇われ社長さんだったんだ。
 やべっ! どうすっぺ。 

 (2011.01.07)   このページのトップへ

『ジャマールへ』374

 ある者が書いている。
 人は、それがかなわないことを恐れて、夢を捨てたりする。
 さらに、かなうことさえも恐れたりもする。 
 私は、君が夢を実現することを疑わなかったが、私までが再び夢を果たせるとは想像もしなかった。 
 季節は移り変わる。
 君と過ごした1年は、人生の冬にあった私に活力を与えてくれた。
 君がいなければ、私は待ったままで命を終えたろう。

 映画『Finding Forester』の一説である。
 邦題は『小説家を見つけたら』。脈略なく思い出してしまった。 

 (2011.01.07)   このページのトップへ

『カチカチのトトトト』373

 氷点下4℃、家中がカチカチに凍っている。
 雪は有に50センチは積もっている。
 ストーブをつけても全然暖まらない仕事部屋に、かじかんだ手でキーを打つ音が冷たく響いている。 
 仕事が本格的に再開したのだ。 
 妻の手が赤い。
 代表の手が赤い。
 時々、両の手を擦り合わせながらキーを打っている。
 カチカチのトトトト・・・。
 秋田の冬本番、薪も灯油も残りわずかとなってきた。 

 (2011.01.07)   このページのトップへ

『やっぱヒッチコックは巨匠だ』372

 今、ボクらはヒッチコックにはまっている。
 昨日は8時間、「裏窓」「泥棒成金」「知りすぎていた男」「引き裂かれたカーテン」を観た。
 さすが「サスペンスの神様」とか「スリラーの巨匠」とか「映像の魔術師」とか言われるヒッチコックだ。本当に良く出来ている。飽きさせない。 
 「めまい」「サイコ」「鳥」はまだ残してある。怖いのが残っちまった。どうしよう・・・。でも観たい! 
 ボクらがヒッチコックを好きな理由は、映画そのものだけでなく彼の人間性でもある。
 例えば、奥さんを尊敬しているところ。アカデミー賞の映画功労賞だったかをもらった時、スピーチした彼のこの言葉がいいではないか。
「私は3人の女性にこの賞を捧げたい。1人は私の作品すべてを擁護してくれたアシスタント・ディレクター、もう1人は我が子パトリシアの母、もう1人は私の最愛の妻である」
 言うまでもなく、3人ともアルマ夫人のことだ。このスピーチを聞いていた彼女が、舞台の裾でソッと涙を拭っていた光景が、今でも目に焼き付いて離れない。年末にNHKのヒッチコック特集でそれを観た時、ボクらはジーンとなった。
 もう一つ、ボクらがヒッチコックファンなのは、彼がおいしいもの好きで、しかも外食ではなく、必ずアルマと一緒に家で食べることである。映画スターなども、必ず家に呼んで会食していた。
 そのTV映像に「鶏の丸焼き」が写っていた。アルマが足のところをちょっと切り分けて食べ、あとは全部ヒッチコックが食べていた。
 その影響で、ボクらはどうしてもそれが食べたくなって、クリスマスにわざわざ「丸鶏」を買いに行ったほどだ。妻は足だけではなく半分全部食べたが・・・。
「似てるよね、彼らと」と妻が言う。
「食いしん坊のところ?」
「そう。でも似てないところもある」
「えっ?」
 そっか、ボクはまだ巨匠になっていない。巨匠どころか「不肖」未熟者のままだ。 

 (2011.01.07)   このページのトップへ

『やっぱ太宰治は文豪だ』371

 妻とBSでやってた『太宰治短編集〜生まれて、すみません〜』を観た。
 4時間の番組。「キリギリス」「トカトントン」「走れメロス」「蓄犬談」「犯人」「雪の夜の話」「女生徒」「駆け込み訴え」など、青春の日に読んだことがあるものも、そうでないものもあったが、総じてグイグイ引き込まれた。
 妻などは太宰治にかぶれていた人間だったから、懐かしさで目がランランと輝いていた。 
 自虐的ユーモアの天才だなあ。そう思った。 
 「キリギリス」で作者が女性の主人公に言わせるこの台詞。「あなたは・・・早くつまずいたらいいのだ」サイコーだね、これ。
 太宰治がなぜ若者の支持を受けるのか、その謎が解けたような気がした。
「大人になるとね、太宰ファンって言えなくなるのよね」
 青森の金木にある『斜陽館』に泊まったことまである妻が言った。
「何となく恥ずかしくってね」
 う〜ん。
「でも、やっぱりいいものはいいって分かったわ」
「ひと回りしたんだよ」
 本棚から太宰の本を持ってきた。
「しばらく太宰の読み聞かせやろっか」
 文学少女の目がキラッと輝いた。 

 (2011.01.06)   このページのトップへ

『1杯のかき揚げソバ』370

 我がふるさと五城目町には、あまりいい印象を持っていなかった。
 封建的だなあ。行政サービス悪いなあ。イオンの店員感じ悪いなあ。土崎ジャスコを見習ってほしいよなあ。朝市なんかもう最悪だよなあ。「五城目すずめ」と言われるくらい、人の悪い噂を好んでチュンチュン口外する人が多いなあ・・・。
 だけど今回、汚名返上、心機一転、リニューアルオープンの出来事があった。 
 忘れもしない。あれは1月2日の朝10時半。 
 ボクらが石巻に向かって旅立つ日のことである。
 いろんなものを整理したので朝飯がなかったボクらは、とりあえずどこかで食べよう、と急ぎクルマに乗った。
 コンビニでもよかったんだけど、なぜかあったかい『ソバ』が食べたかった。
 正月早々、食堂はどこも開いてなかったが、『五城館』というところに明かりがついていた。
 準備中。
 開店は11時からだった。あきらめて帰ろうとした時だった。
「いいですよ。何食べますか?」優しく店員さんにそう言われた。
「ソバです」
 オーダーは決まっていた。
「いいですよ」店員はにっこり笑って席に案内し、「まだ暖まっていませんけど・・・」と暖房のスイッチを入れた。
 やがて運ばれてきた『かき揚げソバ』の味といったらなかった。
 1杯のかき揚げソバ。幸せのかき揚げソバ。
 五城目が好きになった。  

 (2011.01.06)   このページのトップへ

『エッセイ書いててよかったよ』369

「エッセイ読んでれば真理ちゃんの生活ぶりがよく分かるよ。もしかして私のほうが、真理ちゃん以上に知ってるかもしれないよ。『ふぬけ椅子』とかね」
 そういう言葉を言われたと妻から聞いた。
 前に書いたモモコちゃんからは、「これからも真理ちゃんを不幸にしたら、よりパワーアップしたオバサンパワーで殴りにいくぞ!」とハッパをかけられた。 
 妻のOL時代の後輩も「読み疲れるほど」読んでくれたらしい。 
 ありがたいね。こんなふうにクダらないことを書いていても、少しでも何かメッセージが伝えられてるってうれしいことだね。
 石巻のおばあちゃんも、ワクワクして楽しみに見てくれているんだって。
 楽しいね、何だか。

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『同年代の死』368

 ボクより3つ上の村の人が死んだ。54歳で。
 昨日お葬式だった。
 ボクらはおととい、帰り足で隣のケイコさんからそれを聞き、すぐにお焼香に行った。 
 難病を患っていたということ以外、詳しくは誰も話さない。 
 それだけに、「闘病中、主人がすごく苦しんだので、これで楽になったと思うとホッとしています」という奥さんの心痛、それまでの苦労が忍ばれジーンとなった。
 短いね、人生。
 いろんなことを考えた。

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『ギラギラ女の不覚』367

 以前、ボクが『コロンボ』を観ながら寝てしまったことがあったが、今度は妻が不覚をとった。
 夕べのことである。映画は『泥棒成金』だった。
 いつもはこの時間になると、妙にギラギラしてくる妻が、9時ごろから観始めて、たった30分でダウンした。 
 年末年始の疲れが出たのかな。 
 結局、ボクも映画はやめて一緒に寝ることにした。
 熟睡。
 朝起きたら、雪がこんもり積もっていた。
 妻の休みの申請は今日までである。ラストワンデイ。今日は何観ようかな?

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『カニサギ』366

 ちょうど1年前になるのだが、石巻のおばあちゃんはこの時期『カニサギ』にあった。
 『カニサギ』は、その後『振り込めサギ』同様、老人を狙ったサギ事件として、新聞でも取り上げられたのだが、人のいいおばあちゃんは、まんまと引っ掛かってしまった。
「なんでも創業10周年特別価格、タラバガニ3万円分を1万円で、おまけにイカとホッケとサバをお付けします、っつうがら買ったんだよ。これはサギだね」 
 届いた箱を開け、しみったれたカニ足と、さらにしみったれた(仙台弁で言うと『コツケダ』)イカ、ホッケ、サバを睨みながらおばあは言った。 
 確かにそれは人をバカにしたものだった。まともに買えば2000円程度のものだった。
「私、サギにあったんでねえべが」
 おばあちゃんは下あごを出して、ガックリと肩を落とした。
「でも、おばあちゃん。電話で入れるっつったもの、全部入ってっぺ。これはサギではないんだよ。別にだまさったわげではないんだよ。訴えたってダメなんだよ」
 ロジカルコメンテーターの義兄が、いつものように容赦なくチクリとやった。
「確かに、みんな入ってるっちゃ入ってるっけっと・・・」
 おばあちゃんは、そういってほぞをかんだ。ボクたちはかける言葉を失った。
 それから1年、またその電話がかかってきたのだと言う。
「またおんなじこと言うんだよ。創業10周年だって・・・」
「で? まさか買わなかったよね!」
 慌てて妻が聞いた。
「うん。でも私ばりでねぐ、いっぱいだまされたって新聞に出てたよ」
 カニの次は何がターゲットになるのだろうか? 気をつけてください。 

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『キタウのコーウ』365

 北宇商店の弘宇という、中学時代の友人がいる。秋田に来て1回会っただけ。
 彼のブログ『北宇とあそぼう』はおもしろくていつも読んでいるのだが、この前、クルマで偶然彼を見かけた。
「コーウ!」
 ボクは窓を開けて、大声で、酒のケースをクルマから降ろしている男に叫んだ。 
 なぜ、ボクがその男をコーウだと断定したかというと、酒の積み降ろしをしていたこともあるが、後ろ頭の形状がそっくりだったからだ。彼は禿頭なのである。
「コーウ!」
 もう一度大声で叫んだ。その男は顔を上げて満面の笑みで、
「おう!」と、ボクに手を挙げた。
「・・・」
 違った。違う人だった。
「間違いましたあ!」
 ボクはそう言って、止めかけていたクルマを急発進させた。
「誰?」
 妻はサッパリ分からない顔でそう聞いた。
「違う人だった・・・」
「えっ!」
 遠ざかりながらバックミラーをのぞくと、その人はまだ手を挙げたままこっちを見ていた。
 あんた、誰? 

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『超楽天イーグルス』364

 このエッセイに何度も登場し、かつ自らのメールも引用されているスズキトウエイという男について述べたい。
 妻が言う。
「彼はきっと、好きなことやって、笑って、満足して、天寿を全うして死ねる人だね。本当に幸せな人だわ」
 その通りだと思う。 
 でも、今までストレスで2回も血を吐いて救急車で搬送されたことがあった。
「彼の弱点は、ただ一つそこにあるかもしれないね」
 現実生活、特に仕事上で『ダメ出し』攻撃を受け続けたときの懸念をボクは述べた。
「大丈夫。これからはまずないと思うよ」
 そうだな。今の彼をへこますようなものは何もないかもしれない、と思った。
「超楽天イーグルス」
 それだからスズキトウエイなのだ。

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『石原さんはライスボールで歌った』363

 ボクらが愛してやまないオペラ歌手「石原克美」さん。
 その方が、1月3日、東京ドームでのライスボールで「君が代」を歌った。
 それを、ボクらは石巻のTVで観た。
 カッコよかった。おばあちゃんも聞き惚れていた。 
 去年の春、ボクらを東京のリサイタルに招待してくれた石原さん。
 仕事上の関係は微塵もないのに、ちょっとしたご縁で知り合っただけなのに。
 TVをうっとり見ていたおばあちゃんにボクは言った。
「今度、石原さんのリサイタルに連れて行くよ」
 おばあちゃんは、本当はまんざらでもない様子でこう言った。
「だあれ、この年で、私、東京なんて行げないもの」

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『許せるショミキ』362

 ショミキ(賞味期限)にうるさいボクらだが、ものによって許せるものと、そうでないものがある。
「玉子なんて1ヶ月ぐらい平気の平三よ」
 と、妻は言う。
 でも、ボクはそれが許せない。 
「納豆なんか、どうせ初めから腐ってるんだから1週間は全然OKさ」
 ボクは長年の経験でそう主張するが、妻は「捨てなさい、そんなの。気持ち悪い」と言う。
 年始。いろんなものが普段と違う状態で置き去りにされている。
 明日、ゴミ回収日までに英断を下さなければなるまい。

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『おっかしいね、おばあちゃん』361

 石巻のおばあちゃんの部屋のコタツで、妻と3人で(犬のアッシュもいたかな?)ベタベタしゃべっていた。
「あのさあ、石巻弁の『ごっせっ腹焼ける」ってどういう意味なの?」
 ボクがおばあちゃんに聞いた。以前、そういうタイトルでエッセイを書いたものの、本当のことが分からなかったからだ。
 おばあちゃんはこう言った。 
「ああ、それは『ごしゃぎっ腹が焼ける』っていう意味だよ。腹が立って腹が立って、こう、かきむしりたいようなときに使うんだっちゃ」
 ああ、そっか。そういうことだったのか。『ごしゃぎっ腹』ねえ。
 『ごしゃぐ』っていうのは、秋田弁でも「怒る」ことを意味する方言として定着している。
 「ネイガー」という秋田版仮面ライダーのようなキャラクターヒーローも、怒ったときに、確か『ゴーシャーック!』と叫んでいたはずだ。
「じゃあ、『ごしゃぎっ腹』が縮まって『ごせっ腹』になったわけね」
 妻も感心している。
 それから、話はいろんな方向に飛んで、やがて『頭寒足熱』の話題に。
「おばあちゃん、靴下の上にホッカイロ貼って、もう一枚靴下履くと、すっごいあったかいよ」
 得意になって、ボクはそう言い、靴下を1枚脱いでみせた。
 おばあちゃんは、目を丸くしてこう言った。
「でも、足ゴロゴロするんでない?」
「いや、慣れればそんなでもないよ」
 ボクがそう言うと、おばあちゃんは妙なことを言った。
「私ねえ、何ねっぱってんだと思ったら、それが自分の肉だったんだ。ほれっ」
 おばあちゃんは自分の靴下を脱いで裸足になった。像のような足だった。
「足の指の付け根さ、ほれ、こうしてみんな肉が集合してるっちゃ」
 確かに、指の回りに肉が集合して、たぐまっていた。
「年取ると、こごさ、みーんな集まって寄ってくるんだおん」
 妻とボクは思わず吹き出した。それから死ぬほど笑い転げた。
 これじゃあ、余計にゴロゴロして歩けないと思った。
「でも、貼るところをずらせば、かえって平らになるんじゃない?」
 妻の発言に、今度はおばあちゃんも一緒になって笑った。

 (2011.01.05)   このページのトップへ

『今年の年賀状に思う』360

「締め切りに追われて、徹夜もつらい年頃になりました」
「まだまだこれから・・・と思うものの、体がネ。2人の娘も受験だし、私も一花咲かせるかどうか、ちょっと・・・。踏ん張ってみますヨ」
「人生半世紀を過ぎていくと、体力の衰えを日一日と感じています」
 同じぐらいの年齢の人たちから、こんなふうな言葉が目につくようになった。 
 それから、いつもは何か必ずメッセージを書いてくれていたのに、今回は何も書いてない賀状も多かった。
 年賀状すら送ってこない人も結構いた。
 う〜ん、どう考えればいい?
 昨日、石巻からいただいてきた「大吟醸酒」を飲み、同じく「毛ガニ」を食べながら、妻とそのことを話し合った。
「体力の衰えに関しては、分かる、分かるって感じよね」
「うんうん」
「サラリーマンの場合、時代が時代だから50代って一番微妙な年回りかもね」
「肩たたきとか、リストラとか?」
「うん、今更再就職とかも厳しいから、何とか最後まで逃げ切ろうって頑張ってるのかもしれない」
「子どもの受験とか、そこら辺も重なって大変なんだろうね」
 そういう分析をしながらお酒を飲んでいると、大吟醸が何だか「わびしい酒」になってきた。
「でも、みんな頑張ってんだよ」
「そうね、みんな頑張ってるのよね」
 毛ガニも、何だか「カニ缶」の味になってきた。

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『ビリになる快感』359

 石巻に行くのに高速を使いました。
 ボクたちのクルマは、平成12年製造の軽のワゴンR。
 「五城目・八郎潟IC」〜「古川IC」までの区間、ボクたちは合計644台のクルマに追い越されました。
 えっ? どうして分かったかって? 
 数えていたからです。ええ、本当です。
 それにしてもこの数字、今まで何十回となく石巻に帰った中でも記録的なものです。きっと帰省のUターンラッシュと重なって交通量が増えたせいなんでしょう。
 644台に追い越され、その一方、自分たちが追い越したクルマはゼロ。644:0。
 多くの人は、この事実を、0勝644敗というふうに理解し、敗北感、屈辱感、無力感を味わうはずです。
「オレってダメなヤツ?」そういうふうに思うはずです。頭をかきむしり、クルマを蹴飛ばしたくなる衝動に駆られるかもしれませんね。
 でもね、ボクたちは違うんですよ。全然イライラしません。むしろ快感。
 制限速度80Km、安全速度80Km、経済速度80Kmで走っているんだから、ぜ〜んぜん平気。クルマにも、地球にも、自分たちにも優しく走っているんだからね。
 明治の随筆家(エッセイスト)寺田寅彦さんが、こんなことを書いてたのを思い出します。
「いわゆる頭のいい人というのは、いわば足の速い旅人のようなものである。人より先にまだ人の行かない所へたどり着くことができるかわりに、途中の道ばた、あるいはちょっとした脇道にある肝心なものを見落とす恐れがある」と。
 ボクらにとって、肝心なものとは「ゆっくり味わうこと」です。途中の道ばたに咲いている花を眺めたり、土手に座って流れる雲を見ていたいのです。
 だったら高速なんか乗るな! と怒られそうですが、普通道では1日がかりの帰省になってしまいます。
 まあ、それはそれとして、秋田道などはほとんどの区間が1車線なので、ものすごくプレッシャーがかかります。
「ああ、後ろのクルマ怒ってるよ!」
「わあ、あんなに続いてるよ!」
 サイドミラーを見つめながら妻が言います。
「大丈夫だ。もう少しで追い越し車線だ」
 やがて、追い越し車線になり、何十台というクルマがトロいボクらを一瞥して、あるいはあからさまにバカにしながら、猛スピードで追い抜いていきます。
「やったあ〜、やっとビリになったね」
 ボクらはホッと胸をなで下ろします。 
 でも、せっかく「ビリになる快感」を得たのもつかの間、1分もしないうちに、再びボクらは「トップの不快感」を味わうことになります。
「ああ、またトップになっちゃったよ」
「大丈夫だ。もう少しで追い越し車線だ」
 この繰り返しです。
 本当に高速は疲れます。きっとみんな「頭のいい人」たちなんでしょうね。 

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『書きたい病』358

 久しくエッセイを書いていなかった。
 ボクは今、『書きたい病』にかかっている。
 皆さんも『読みたい病』にかかっているはずだ。
 そういう「うぬぼれ」はさておき、秋田に帰ってきたボクは、例によって早起きして(と言ってももう7時半)パソコンに向かっている。
 サブイ! やっぱ、こっちの寒さは尋常じゃない。石巻はよかったなあ。
 予定通り、1月2日の夜、妻はバンド仲間と飲み会に行った。
 その間、ボクは、石巻のおばあちゃん、義姉のリカさん、義兄のエンちゃん、犬のアッシュらと過ごすことになった。
「ま、がいないと、や、は何だか元気がなくて可愛そうだった」
「さっぱ、お酒も飲まないんだおん」
 おばあちゃんたちからそう言われたと、遅く帰ってきた妻はボクの枕元に来て言った。
 うれしそうな顔だった。 
 それから、久しぶりの再開で大いに盛り上がったと、妻は得意そうにいろんな話をしてくれた。
 その中で一番おかしかったのがこれ。
「あのね、私トイレに行って普通に帰ってきたのね。そしたら、みんなに『早い、早い』ってほめられたの。『なんで?』って聞くと、みんなは『年取って切れが悪くなった』って」。 
 切れが悪くなったお友だちの写真がこれです。勝手に載せちゃいました。すみません。

 

 (2011.01.05)   このページのトップへ

『明けました』357

 今年も秋田で年を越しました。
 昨日は『タラ鍋』を食べ、お刺身を食べ、紅白は観ず、録画しておいた『坂の上の雲』を4時間半観て、11時にダウンしてしまいました。
 昨日のスリップがよほど怖かったと見えて、何回も夢に出てきました。その度に跳ね起きてしまいました。
 ああ、今頃はみんなで盛り上がってるんだろうなあ。石巻の実家に集まった顔ぶれを思い出しながら、2人でそういう未練を振り払うようにしていました。
「でもさ、無理して行って今生の別になるよりはよかったよね」
 妻はそう言って自分を納得させていました。
「リカさんの手巻き寿司食べたかったなあ・・・」
 ボクの未練はまだ続いています。
 今日、天気予報を見ると、2日には少し良くなるみたいです。
「頼むぜ、天気! 妻の『バンド仲間新年会』には絶対行かせておくれ!」
 そう願ってやまない元旦です。  

 (2011.01.01)   このページのトップへ

『戻ってきました』356

「やっぱり通行止めだったべ」
 隣のケンゾーさんが、雪かきをしながらボクらに言った。
「今日行ぐって聞いだがら、おがしいど思ってだんだ」
 確かに無謀だった。この豪雪、しかも湿り気を含んだ滑る雪。
 実は、高速に乗る前の道で、わだちにハンドルを取られスリップし、ツルーッと対向車線に入ってしまうという危ない目に遭った。
 対向車がなかったからよかったものの、一歩間違えたら大惨事だった。
 そのことで、妻は完全に凍り付いてしまった。ボクも心臓がバグバグしていた。
 でも、今回は一家のほぼ全員が集まる段取りになっていたし、妻は2日に新年会もある。
 ボクは勇気を振り絞って、高速にクルマを走らせた。
 ところが、前を見据えたまま、固まって瞬きすらしない妻と、ハンドルを1センチもブレないよう手に力の入るボクの間に、当然いつものような会話などない。
 おまけに、続けざまに2台、ガードレールにぶつかって大破しているクルマを見た。救急車が2台後ろから追い越していった。パトカーも3台見た。
「どうする?」妻が初めて口を開いた。
「怖い!」とボク。
 結局、ボクらは「秋田中央IC」で下りることにした。
 下を通って帰る途中、その区間は通行止めになっていた。
 肝を冷やし過ぎて、ドッと疲れた。やっとの思いで家にたどりついたが、ちょうど除雪車が来たばかりで、車庫前に大量の雪。それをどけるのにまたドッと疲れた。
 実家に電話をすると、ロジカルコメンテーターの義兄にこう言われた。
「その判断は正しかったと思うよ」 
 でも、電話に代わったおばあちゃんは、本当に気落ちした声でこう言いました。
「あんだだち来ないと、寂しいねえ・・・」 

 (2010.12.31)   このページのトップへ

『いい年だったな』355

 今日は大晦日。豪雪の中、これから石巻に出掛けます。
 そういうわけで、このエッセイを読み続けてくれた親愛なる読者の皆様に、今年最後のごあいさつです。
 鈴木東栄、あるまんど山平を初め、今年はいろんな仲間との旧交を深めた1年だったなあ。
 昨日も、妻の友人で、以前「頭寒足熱」を教授してくれた「モモコちゃん」から手紙が届いた。
「いつもエッセイ読んでるよ。ふたりの仲の良さが伝わってくるよ。お互いいいだんなさんに巡り会ったね」達筆な文字でそう書かれていた。ミスタードナッツの割引券まで入っていた。
 モモコちゃんは、かつて妻が仙台を出て秋田にくるとき、ボクに向かってこう言ったんだっけ。
「真理ちゃんを幸せにしなかったら、私殴りにいくよ!」
 古手川祐子似の可愛い顔で、ボクはそんなことを言われた記憶がある。
 本当にみんなありがたいね。そんないろんな人たちの愛情に、ボクらはどっぷりと浸かった1年でした。
 妻は、1月2日に、昔のバンド仲間と久しぶりの旧交を交えることになっている。昨日、そういう話がまとまったようだ。よかった、よかった。
 そんなわけで、1月3日までは石巻です。
 来年もたくさんエッセイ書きます。読んでくださいね。
 今年は本当にありがとうございました! 皆さんも良い年をお迎えくださいね! ではまた。

 (2010.12.31)   このページのトップへ

『A型思い出居酒屋』354

 おととい、ボクは中学、高校の同級生たちに誘われて、五城目町の「路傍」という居酒屋に行った。
 こっちに来て、五城目町で飲むなんて初めてだったし、級友と会うのも数えるほどだったので少しドキドキしていた。
 集まったのは全部で5人。秋田市役所に勤めているKS君、五城目役場のTN君、木材会社勤務のK君、2年後輩で小学校教諭のT君がその顔ぶれ。
 当然のことながら、1時間もすると話はだんだん盛り上がって、自分の栄光の時代へとタイムスリップしていく。
「オレにとって、神童と呼ばれていた小学校時代が一番の花だった。あそこで終わったような気がする」
 と、KS君は言って、そのあとガハハッと笑った。
 TN君は、高校時代から吸っていた「ショートホープ」をまだ吸っていた。秋田市の喫茶店で、TN君とボクは「どっちがたくさん吸えるか」を競い合って、気持ちが悪くなったことがある。
 いろんな話に花が咲いたが、ふと血液型の話になって、気付いてみたらボク以外は全員A型であることが分かった。ちなみにボクはB型だ。
 血液型占いはあまり信じないほうだが、でも、確かにボク以外はみんな、人生を真面目に、実直に生きてきた人間たちではあった。

 (2010.12.31)   このページのトップへ

『アルトサックスのような酢ダコ』353

 いやあ、驚いた。
 昨日、年末の買い物に大潟村に行ったときのことだ。
 この時期、秋田では恒例の「真っ赤な酢ダコ」が山積みになって売られていた。
 その中に一つ、ボクらが目を疑うほど大きな足の酢ダコがあった。
「これ、どっかで見たことある」
「えっ?」
「うちにあるアルトサックスだ!」
 本当だった。大きさといい、曲がり具合といい、シイタケを裏返したような吸盤の形状といい、まさにアルトサックスそのものだった。
 ただ、色だけが違ってた。ブロンズ色か赤かの違いだった。ボクは、10年以上も前(まだお金があった頃)に買って、ほとんど吹かないままケースにしまってあった、結構高かったサキソホンのことを思い出した。
「来年はサックス吹こうかな」
 ボクがそう言うと、妻はコイツコイツの肘鉄をくれながら、
「ライブの時に吹いたハーモニカで気を良くしたな、こいつう」
 と言った。
 ちなみにボクのハーモニカは、あの名プロデューサー「あるまんど山平」からも絶賛を浴びている。(ホント?)
「その前に肺活量鍛えなきゃダメね。それと老眼鏡も買わなきゃ。だって譜面見えないでしょうに」
 妻はそう言って、やる気満々のボクにピチャッと水を掛けた。 

 (2010.12.31)   このページのトップへ

『弊社代表の文章力』352

 さすがだ。見事な文章だ。
 品格がある。格調高い文章だ。素晴らしい構成力だ。さすがは弊社代表だ。こういう切り口があったか。脱帽だ。見習わなければいけない。まだまだボクはヒヨッコだ。
「覚しきこと言わぬは腹ふくるるわざなれば」
 今年最後の「雑感」は最高の出来になった。
「覚しきこと言わぬは腹ふくるるわざなれば」
 文章とはいかにあるべきか、それが分かるはずだ。読んでほしい。決して「ほめ殺し」ではありません。敗者がチャンピオンに「コビ」を売っているわけでもありません。

 (2010.12.30)   このページのトップへ

『頭おかしいんじゃない?』351

 昨日、生協からみかんが1箱届いた。
 みかんは家に死ぬほどあった。2箱も。
「誰頼んだの?」
「オレかも」
「頭おかしいんじゃない?」
 そう言われた。

 (2010.12.30)   このページのトップへ

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